全 情 報

ID番号 05876
事件名 休業補償給付不支給処分取消請求事件
いわゆる事件名 呉労働基準監督署長(浅野建設)事件
争点
事案概要  下請企業の実質的経営者の作業中の負傷につき、元請企業と下請企業の関係は請負契約関係であり、右負傷者は元請企業の労働者にはあたらないとされた事例。
参照法条 労働者災害補償保険法1条
労働者災害補償保険法7条
体系項目 労災補償・労災保険 / 労災保険の適用 / 労働者
裁判年月日 1992年1月21日
裁判所名 広島地
裁判形式 判決
事件番号 平成2年 (行ウ) 4 
裁判結果 棄却
出典 労働判例605号84頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-労災保険の適用-労働者〕
 A会社は、建築現場では、B会社の現場主任等から組立、据付工事の指示を受け、工場では、鉄工の加工精度について指示を受けていたものであるが、請負による建築事業は、元請や各下請の仕事がそれぞれ有機的に関連して行われるものであるから、事業の適正かつ安全な遂行を図るうえで、注文者側から工事施行上の段取り、材料の選択、工法上の問題、安全衛生管理上の事項等について、下請負人に対して指示、指導等が行われるのはむしろ通常のことである。B会社がA会社に対して建築現場で行った指示が、右のように事業の適正かつ安全な遂行を図るうえで通常必要とされる範囲を越えていたものと認めるに足りる証拠はなく、また鉄工の加工精度について指示をなしたことは単に請負契約の内容に沿うよう債務の履行を求めているにすぎないものと認められる。
 更に前認定のとおり、B会社は、予め浅野建設に支払うべき工事代金から労働保険料相当額を天引きして、右保険料を支払っていたが、これは、B会社の負担である労働保険料をA会社とB会社間の内部関係において受益者であるA会社の負担としたものであり、右事情によれば、B会社は原告を自らの労働者と認識していなかったものと認めることができる。
 (2) 右検討を踏まえて、前認定事実に照らして考えると、原告は、Cとともに自らの計算と危険負担に基づいて事業経営を行う独立の事業主としてB会社と請負契約を締結したのであって、B会社が原告及びA会社の従業員に対して行う指揮監督も注文者として通常なす程度を越えていないと認められ、B会社がA会社に対して支払った工事代金は、原告及びA会社の従業員の労務提供に対する賃金ではなく、独立の事業主に対する請負代金であるとみるのが相当である。
 したがって、原告がB会社の労働者に該当すると認めることはできない。