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ID番号 05885
事件名 各残業手当等請求事件
いわゆる事件名 彌榮自動車事件
争点
事案概要  タクシー会社営業センターの係長および係長補佐が労基法四一条二号にいう管理監督者にはあたらないとして、時間外割増賃金の請求が認められた事例。
参照法条 労働基準法37条
労働基準法41条2号
体系項目 労働時間(民事) / 労働時間・休憩・休日の適用除外 / 管理監督者
裁判年月日 1992年2月4日
裁判所名 京都地
裁判形式 判決
事件番号 昭和63年 (ワ) 957 
昭和63年 (ワ) 2002 
裁判結果 一部認容
出典 労働判例606号24頁/労経速報1465号3-5頁
審級関係
評釈論文 秋田成就・ジュリスト1030号147~149頁1993年9月15日
判決理由 〔労働時間-労働時間・休憩・休日の適用除外-管理監督者〕
 二 さて、労働基準法は、雇用契約の内容につき私的自治の原則を制限し、労働条件に関する最低基準を強行法規として定め、その遵守を確保することにより労働者の保護を図ろうとするものである。そして、使用者が労働基準法所定の労働時間の枠を超えて労働させる場合に、同法所定の計算方法により超過労働時間毎に算出された割増賃金を支払う義務を負うとされるのも、所定内労働に対する賃金と所定外労働に対する賃金を峻別したうえで、賃金負担増加の事実を明確にすることにより、使用者をして所定の労働時間を遵守させ、過重な長時間労働を抑制する趣旨である。ところで、労働基準法四一条二号が、労働者のうち監督管理者をもって、労働時間や休日に関する強行法規の適用除外としているのは、何もそれら労働者が労働基準法上の保護に値しないという趣旨では勿論なく、必然的に何人かの労働者を使用して経営や労務管理を行わなくては適正な事業運営ができない使用者(経営者)の都合にも法が配慮している結果である。すなわち、経営者と一体となって経営や労務管理に携わる者(法の予定している「監督管理者」)は、その職務の性質上、適宜必要に応じ、法の定める硬直な労働時間等に関する規定の枠を超えて働くことが要請されているので、日々算出された所定外労働時間毎の割増賃金を受給することが現実的・実際的ではない、という経営者側の都合に法が配慮しているのである。
 しかしながら、これら監督管理者が労働基準法による保護の対象から外されている実質的理由は、これら監督管理者は、
 (一) 企業体の中で重要な地位を占め、自分自身の職務の遂行方法につき相当程度の裁量権を有していて、勤務時間などについても厳格な規制を受けず、
 (二) しかも、職務の重要性に応じてそれに見合う高額の給与を受けているはずであるから、敢えて労働基準法による保護の対象としなくても、保護に欠けることがないという点である。