全 情 報

ID番号 05891
事件名 労災補償不支給決定処分取消請求事件
いわゆる事件名 泉大津労働基準監督署長(朝比奈建材)事件
争点
事案概要  洗車作業中のダンプカー運転手の脳内出血につき、業務災害にあたらないとされた事例。
参照法条 労働者災害補償保険法7条
労働基準法施行規則別表1の2の9号
体系項目 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 業務起因性
労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 脳・心疾患等
裁判年月日 1992年2月24日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 昭和62年 (行ウ) 53 
裁判結果 棄却
出典 労働判例609号77頁/労経速報1471号22頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-業務起因性〕
〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-脳・心疾患等〕
 1 医学経験則上、次のとおり認められる(証拠略)。
 (一) 本件疾病は、多く加齢や一般生活における諸種の要因によって自然経過的に発症するが、急激な血圧変動や血管収縮を惹らす過重負荷が加わると、自然経過を超えて発症することがある。寒冷暴露(刺激)は血圧変動等の要因となり得る。
 (二) 右急激な血圧変動や血管収縮を惹らす過重負荷が業務に起因する時、業務が本件疾病発症につき相対的に有力な原因となったと認めるべきである。
 (三) 業務に起因する過重負荷は通常の業務を超えた過重な業務によって受ける負荷であり、通常の業務によって受ける負荷は自然経過の範囲内である。
 (四) 本件疾病は過重負荷を受けてから発症に至るまで、通常は二四時間以内、稀に数日を要し、発症前一週間以前の負荷と発症との関連は希薄である。故に、本件疾病発症に最も密接な関連をもつ業務上の過重負荷は発症前約二四時間以内のもの、次いで、発症前一週間以内のものである。
 (五) 継続的精神(心理)的負荷と本件疾病発症との関連性は未解明である(証人Aの供述は直ちには採用できない)。
 2(一) 原告の本件疾病は、正月休みを含む比較的長期の休養の後、日ならずして発症しており、原告は、本件疾病発症日、発症前二四時間以内、発症前一週間以内、何れをみても、通常の業務を超えた過重な業務に従事していない。
 (二) 寒冷期において脳血管障害は日常生活の自然経過によって発症する例も多いことに照らすと、本件疾病発症日の稼働が特に右発症に関与したと即断することもできない。
 (二) 原告の通常の業務が、それ自体過重であり、慢性疲労による精神的負荷を蓄積したと認められないことは前説示のとおりである。
 (三) 原告は高血圧について医師の治療を受けていなかったから、日常生活における自然経過によって症状が増悪したことも優に考えられる。
 3 したがって、原告の業務が本件疾病発症の相対的に有力な原因であると認めることは困難である。