全 情 報

ID番号 05928
事件名 未払賃金等請求事件
いわゆる事件名 夏山金属工業事件
争点
事案概要  部・課長等役職者に対し、役職手当を支給し、右役職手当に定額時間外手当が含まれているとは認められず、かかる取扱いは労基法に違反するとされた事例。
 時間外労働時間数の算定につき、タイムカードは出退社時刻を示すにすぎず、実労働時間数を明らかにするとはいえないとして、服務記録によって計算された事例。
参照法条 労働基準法32条
労働基準法37条
労働基準法41条2号
体系項目 賃金(民事) / 割増賃金 / 割増賃金の算定基礎・各種手当
労働時間(民事) / 労働時間の概念 / タイムカードと始終業時刻
裁判年月日 1992年5月29日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成2年 (ワ) 5197 
裁判結果 一部認容
出典 労働判例611号37頁/労経速報1475号3頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔賃金-割増賃金-割増賃金の算定基礎・各種手当〕
〔労働時間-労働時間の概念-タイムカードと始終業時刻〕
 (二) 役職手当との関係
 被告は、部、課長等役職者に対し、役職手当を支給していることを理由に、時間外勤務の多寡に拘らず、時間外手当を支払っていない(〈証拠略〉)。しかし、本件賃金規定(〈証拠略〉)は、役職手当は役職者に対する特別手当であり(九条)、時間外勤務手当は労基法の定めによるとしていること(一二条)、役職手当は従業員の残業手当に比べかなり低額であり(〈証拠略〉)、役職者の基本給を考慮しても時間外手当(割増賃金)としては不足するというべきであり、右事実によると、役職手当に定額時間外手当が含まれているとは認められず、被告の右取扱は労基法に違反するといわざるを得ない。
 (三) 原告の時間外勤務
 (1) そこで、原告の時間外勤務時間数を検討する。
 【1】 被告において、役職者以外の事務職従業員の時間外勤務時間数は、タイムカードを基に時間外勤務の届出と承認に基づく残業承認簿(〈証拠略〉)によって確定される。役職者について、時間外手当は支給されないため残業承認簿は作成されないが、タイムカードを基に服務記録は作成され、時間外勤務時間数も記載され、賞与や昇給の査定資料となる(〈証拠略〉)、原告、被告代表者、弁論の全趣旨)。
 【2】 原告の時間外勤務時間数は、他に資料のない以上(資料がないのは被告の違法な取扱に起因する)、服務記録によって確定するのが相当である(タイムカードは出退社時刻を示すに過ぎず、実労働時間を明らかにしない)。
 【3】 服務記録(〈証拠略〉)によると、原告は、昭和六三年四月五時間、五月一一時間、六月一五時間、七月一三時間、八月九時間、九月六時間、一〇月五時間、一一月四時間、一二月及び平成元年一月各一〇時間、二月六時間、三月ないし五月各一時間、七月三時間、八月二時間、九月一時間、合計一〇三時間の時間外勤務をしたと認められる。なお、平成元年一月について、タイムカードの記録と服務記録とでは九時間の差異があるが、同月には直帰が一日、押し忘れが二日あり、これらの日に時間外勤務が行なわれたと推認される。