全 情 報

ID番号 05929
事件名 地位保全等仮処分命令申立事件
いわゆる事件名 健康体力研究所事件
争点
事案概要  別会社の商品販売業務に従事し、仲介料を受け取っていたことを理由とする懲戒解雇につき、右事実は存在しないとして、当該懲戒解雇が無効とされた事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 二重就職・競業避止
裁判年月日 1992年5月29日
裁判所名 大阪地
裁判形式 決定
事件番号 平成4年 (ヨ) 793 
裁判結果 一部認容
出典 労働判例613号38頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-二重就職・競業避止〕
 債権者は、これに対し、「A食品」に関する振込用紙等を所持していたのは、家族や知人が「A食品」を服用していることから、その購入のためのものである旨、またB会社と頻繁に連絡をとっていた点に関しては、債務者の業務として実施していた、債務者の取引先におけるセミナーの資料とするため、B会社手持ちの健康一般に関する資料の提供を受けていたに過ぎない旨主張している。ところで、債務者の商品は、主としてスポーツマン向の体力増強食品等であって、成人病予防等の健康一般の問題とは、対象分野を異にするものであるとは認められるものの、債権者が、債務者商品の販売活動の参考とするための健康一般に関する基本的知識について必要性を感じたとしても、あながち不合理とは言えず、右債権者の説明するところには、一応納得できるものがあることを否定できない。そして、これらの点に関し、B会社の代表取締役Cは、概ね債務者主張と同旨の、債権者が、B会社のため「A食品」の販売業務に従事して報酬を得ていた事実を否定する書面を、債権者代理人宛作成提出していることが認められ、右債権者の説明するところには、一応の裏付けもあると言うことができる。また、前記Dら作成の「週間報告」等の書面についてみると、同人らは、債権者と職場内の人間関係において対立する状態にあったことが認められるから、これら書面の内容には、直ちに、全面的な信をおくことはできない。また、前記Eの陳述については、債権者自身は、かような自認をなした事実そのものを明確に否認しており、右Eの陳述のみを一方的に措信すべきものとするに足る裏付は存在しない。そうすると、結局、債権者が職務専念義務に違反し、就業時間中に債務者の設備を使用して、「A食品」の販売を副業として行って利益を得ていたと認めるに足る疎明は、本件においては見出し難いと言わざるを得ない。
 従って、債権者に対する前記懲戒解雇事由については、これを認めるに足りる疎明はないと言うべく、同懲戒解雇処分は理由がないことに帰するから、債権者は、債務者に対し雇用契約上の権利を有する地位にあることが一応認められる。以上より、本件申立てにかかる、被保全権利の存在を一応認めることができる。