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ID番号 06001
事件名 賃金等請求控訴/同附帯控訴事件
いわゆる事件名 京都広告事件
争点
事案概要  従業員兼務の会社取締役が、取締役として再任されず一従業員となったこと、職務怠慢や営業成績の低下等を理由として一方的に賃金を減額されたことを不当として、減額されない前の賃金を請求した事例。
参照法条 労働基準法11条
労働基準法24条1項
体系項目 賃金(民事) / 賃金の支払い原則 / 全額払・相殺
裁判年月日 1991年12月25日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 平成3年 (ネ) 960 
平成3年 (ネ) 2223 
裁判結果 変更(上告)
出典 労働民例集42巻6号973頁/タイムズ786号195頁/労働判例621号80頁
審級関係 上告審/最高二小/平 5. 3.26/平成4年(オ)580号
評釈論文
判決理由 〔賃金-賃金の支払い原則-全額払〕
 賃金は、労働契約に基づいて支払われるものであり、使用者がこれを一方的に減額できるものではないところ、賃金が基本給と諸手当に区分されている場合、諸手当はその支給目的によって支給額の変動が予定されているものであるのに対し、基本給は懲戒等による場合のほか減額されず、基本給と手当の配分の変更は各月の賃金支給額に変動を及ぼすものであり、更には退職金の算定基準とされるなど、労働者の賃金に重大な影響を及ぼすものであるから、使用者が労働者の合意なくこれを一方的に変更することはできないというべきである。本件においては、賃金台帳や給料支払明細書に記載し、退職金算定の根拠とされていることからすれば、基本給を単なる名目だとか便宜的なものであるということはできない。そして、被控訴人は昭和五二年四月以降、基本給として一五万五五〇〇円、諸手当として七万一五〇〇円、合計二二万七〇〇〇円の賃金を毎月受領していたのであるが、昭和五三年二月から役員としての給料を受領するようになった際に、同月分の給料はそれまでと同額の基本給一五万五五〇〇円と、諸手当がなくなった代わりに役員報酬の名目で七万三三〇〇円を支給され、合計は一八〇〇円増額されたに止まり、翌三月及び四月は役員報酬名目の金額が六万八五〇〇円に減額された結果、報酬の額は以前より三〇〇〇円の減額となったものであるが、役員を退任した際に、役員報酬分を全額減額したうえ、それまでの基本給を新たに基本給と諸手当に分割するのは、役員になった際の扱いと均衡を失するといわなければならないし、まして、その基本給を役員となる以前の基本給より低額とする根拠はなく、その基本給の昭和五三年から昭和五六年までの増額の程度を勘案すれば、全手当を含む賃金全体を考慮しても、控訴人の主張は失当といわなければならない。