全 情 報

ID番号 06099
事件名 地位保全、仮払仮処分申請事件
いわゆる事件名 福原学園事件
争点
事案概要  他の高校への適法な転任命令に従わず従前の職務を強行しようとしたことを理由とする懲戒解雇が有効とされた事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法89条1項9号
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令の根拠
配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の濫用
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務命令拒否・違反
裁判年月日 1987年11月30日
裁判所名 福岡地小倉支
裁判形式 決定
事件番号 昭和61年 (ヨ) 286 
裁判結果 却下
出典 労働判例510号51頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令の根拠〕
 右認定事実によれば、申請人は、本件転任命令発令までに、A高校長としての在任期間が既に六年余りに達していたこと、昭和五九年一一月に公となり、文部省の指導を受けて、理事会全員退陣にまで発展したB短期大学の不正経理については、申請人にも、少なくとも法人事務局長としての監督責任があるというべきこと、付属高校の施設設備の改善について、申請人のA高校における経験が生かせるものと期待されたことが認められるから、本件転任命令には、被申請人内部における人事の刷新並びにA高校長及び付属高校長への人材登用との観点から、被申請人の人事配置上、十分な必要性があったものということができる。
〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令権の濫用〕
 以上のとおり、本件転任命令は、被申請人の人事配置上十分な必要性があり、それ自体A高校及び付属高校の教育活動を何ら阻害するものでなく、しかも、申請人にとり著しく不利益を課するものでもないから、被申請人の裁量権の範囲内の行為と認められ、適法、かつ、有効な命令であったと認められる。
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-業務命令拒否・違反〕
 1 疎明によれば、抗弁2の(一)ないし(三)の各事実がいずれも認められる。また、本件解雇の理由については、疎明及び弁論の全趣旨によって、申請人が、【1】付属高校長に命じる旨の被申請人の命令に従わず、【2】A高校長であると主張して、同高校の校長室に入室してこれを占拠しあるいは教員室内の校長用机に着席して、被申請人からの退去要請にも応じようとせず、被申請人の業務及び新たに着任したC新校長の業務を妨害したものとして、制裁規程七条一号(故なく学園の業務上の指示、命令に服従せず、又は学園の秩序を乱した)及び一四号(故意に学園の業務又は他人の業務を妨げ、又は妨げようとした)に当たるとしたこと、処分決定の際、申請人が被申請人のキャンパス内に所有する土地(被申請人学園の通用門及び駐車場用地)につき本件転任命令発令後の昭和六一年五月二八日債権額金二億五〇〇〇万円の抵当権を設定し、次いで、同月二九日売買予約を原因とする所有権(共有者全員持分全部)移転請求権仮登記を経由したことも、事情として加味されたことが認められる。