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ID番号 06177
事件名 損害賠償請求上告事件
いわゆる事件名 エッソ石油(チェック・オフ)事件
争点
事案概要  チェック・オフ協定締結組合から脱退し別組合を結成した労働者が、会社がなおチェック・オフを継続して協定締結組合に組合費を支払ったのを違法であるとして、右チェック・オフによる損害賠償を使用者に対して請求した事例。
参照法条 労働基準法20条1項
民法651条1項
体系項目 賃金(民事) / 賃金の支払い原則 / チェックオフ
裁判年月日 1993年3月25日
裁判所名 最高一小
裁判形式 判決
事件番号 平成3年 (オ) 928 
裁判結果 棄却
出典 労経速報1526号3頁/労働判例650号6頁
審級関係 控訴審/05550/大阪高/平 3. 2.26/平成1年(ネ)2125号
評釈論文 花見忠・労働判例百選<第6版>〔別冊ジュリスト134〕168~169頁1995年5月/古川陽二・労働判例百選<第7版>〔別冊ジュリスト165〕190~191頁/水町勇一郎・日本労働法学会誌85号160~167頁1995年5月/辻村昌昭・季刊労働法172号167~171頁1994年11月/飯塚宏・平成6年度主要民事判例解説〔判例タイムズ臨時増刊882〕360~361頁1995年9月/本久洋一・法律時報67巻4号103~106頁1995年4月
判決理由 〔賃金-賃金の支払い原則-チェックオフ〕
 労働基準法(昭和六二年法律第九九号による改正前のもの)二四条一項ただし書の要件を具備するチェック・オフ協定の締結は、これにより、右協定に基づく使用者のチェック・オフが同項本文所定の賃金全額払の原則の例外とされ、同法一二〇条一号所定の罰則の適用を受けないという効力を有するにすぎないものであって、それが労働協約の形式により締結された場合であっても、当然に使用者がチェック・オフをする権限を取得するものでないことはもとより、組合員がチェック・オフを受忍すべき義務を負うものではないと解すべきである。したがって、使用者と労働組合との間に右協定(労働協約)が締結されている場合であっても、使用者が有効なチェック・オフを行うためには、右協定の外に、使用者が個々の組合員から、賃金から控除した組合費相当分を労働組合に支払うことにつき委任を受けることが必要であって、右委任が存しないときには、使用者は当該組合員の賃金からチェック・オフをすることはできないものと解するのが相当である。そうすると、チェック・オフ開始後においても、組合員は使用者に対し、いつでもチェック・オフの中止を申し入れることができ、右中止の申入れがされたときには、使用者は当該組合員に対するチェック・オフを中止すべきものである。