全 情 報

ID番号 06209
事件名 懲戒処分無効確認等請求控訴事件
いわゆる事件名 仙台統制電話中継所事件
争点
事案概要  年休取得者が代替勤務者の同意を取り付ける慣例があるにもかかわらず、これをせずに年休取得をしたことにつき、事業の正常な運営を妨げる場合に当たるとされた事例。
 年休取得に対する賃金カットに対し附加金の請求がされた事例。
 年休取得の際に違法な取扱いがあったとして慰謝料の請求がされた事例。
参照法条 労働基準法39条4項
労働基準法114条
民法709条
民法710条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 使用者に対する労災以外の損害賠償
年休(民事) / 時季変更権
雑則(民事) / 附加金
裁判年月日 1993年10月18日
裁判所名 仙台高
裁判形式 判決
事件番号 昭和63年 (ネ) 45 
昭和63年 (ネ) 47 
裁判結果 変更(確定)
出典 タイムズ847号203頁/労働判例650号62頁
審級関係 一審/03915/仙台地/昭63. 1.27/昭和53年(ワ)874号
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-使用者に対する労災以外の損害賠償〕
〔雑則-附加金〕
 当裁判所は、被控訴人Y1と同Y2については、両名の本訴請求が原判決認容の限度で正当であり、その余は失当と判断し、被控訴人Y3の本訴請求は、主文一1(一)の限度で正当であり、その余は失当であると判断するが、その理由として、次のとおり付加、訂正するほかは、原判決理由中被控訴人らにかかる説示部分を引用する。
〔年休-時季変更権〕
 第二電力課においては、年休権を行使する者が、予め代替勤務者を捜して同意を取り付け、そのうえで課長に年休の時季指定を申し出で、課長は、右申出でに基づいて、勤務割を変更(週休日の変更を含む。)し代替勤務者を配置するというのが慣例であった。それゆえ、週休等勤務予定外の職員にとって、予め一般的に予備の代替勤務がありうるものと受けとめられているような職場の実態ではなかったのであるが、同課における右慣例は、年休権者と勤務割の変更を受ける者との利益調整を図るうえで合理的なものというべきである。それなのに、被控訴人Y3は、右慣例の方法によらないで年休の時季指定をしたのである。
 これらの事情を考慮するならば、被控訴人Y3による右の時季指定にかかる同日午後の時間帯については、A課長に対し、勤務割変更の対象となる職員に代替勤務の同意を得べく意向打診することを求めるのは、慣例による従前の対応を超えて通常の配慮以上のことを要求するものというべきであるから、同課長において、使用者としての通常の配慮によったのでは、代替勤務者を確保して勤務割を変更することが客観的に可能な状況にはなかったものであると判断するのが相当である。右時間帯につき、被控訴人Y3が年休(午後半日)を取得することは、第二電力課の事業の正常な運営を妨げることになるといわなければならない。」