全 情 報

ID番号 06224
事件名 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 ケイエム観光事件
争点
事案概要  観光バス運転手がバスガイドと情交関係をもったことを理由とする解雇が有効とされた事例。
 解雇が違法であるとして損害賠償請求がなされた事例(棄却)。
参照法条 労働基準法2章
民法1条2項
民法709条
民法710条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 使用者に対する労災以外の損害賠償
解雇(民事) / 解雇事由 / 企業秩序・風紀紊乱
裁判年月日 1993年12月16日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和63年 (ワ) 16829 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 タイムズ842号160頁/労働判例647号48頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-企業秩序・風紀紊乱〕
 被告会社にあっては、その営業上女性バスガイドが不可欠であって、その確保等のため被告会社内における規律保持が特に要求されていること及び男性であるバス運転手と女性バスガイドが長時間同乗する勤務形態や宿泊を伴う旅行に同乗する勤務形態が予想されること(A証言)に照らすと、バス運転手と女性バスガイドとの間における男女関係を就業規則によって原則として禁止し、これに反した場合には「賭博その他著しく風紀を乱す行為をした」ものとして解雇することができる旨定めることには合理性がある。
 なお、本件解雇が解雇権の濫用に該当するか否かを検討するに、前記認定したとおり、原告は、勤務時間中に、被告会社内において、運転手とバスガイドという職務上の関係を利用したり脅迫的な文言を使用する等してBを誘っていること(もとより、本件は男女間の事柄であって、Bが任意に原告との情交関係を持ったという側面があることを完全に否定することはできないが、最初に情交関係を持った当時、Bは未だ一八歳の独身女性で、被告会社に入社して四か月程度しか経っていない新人バスガイドであったのに対し、原告は当時既に四〇歳を越えた妻子を有する男性であり、被告会社に入社して一〇年を経過したベテラン運転手であったことを考えると、Bにおいて原告の誘いを断固として断ることが期待できたかどうかは疑問であり、全く任意に情交関係を持ったケースと本件とを同一視することは相当ではない。)、本件解雇が原告の経済的状況等を考慮して普通解雇にとどまっていることの各事情を総合すると、本件解雇が解雇権の濫用に該当するとはいえないというべきである。
〔労働契約-労働契約上の権利義務-使用者に対する労災以外の損害賠償〕
 第四 争点2に対する判断(被告らの原告に対する不法行為の成否)
 本件解雇が有効であることは前述したとおりであり、また、本件手紙が原告とBとの間の情交関係の存在という基本的部分について虚偽の文書といえないことも、前述したとおりである。そして、他に被告らに原告の主張する違法行為を認めるに足りる証拠もない。
 従って、この点に関する原告の主張は理由がない。