全 情 報

ID番号 06249
事件名 雇用関係存在確認等請求事件
いわゆる事件名 東日本旅客鉄道事件
争点
事案概要  JRの管理する駅の改札担当の職員が出札売上金三万五〇〇〇円を着服したとして諭旨解雇され、その効力を争った事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務上の不正行為
裁判年月日 1994年3月2日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成1年 (ワ) 4507 
裁判結果 認容(控訴)
出典 時報1486号131頁/タイムズ847号189頁/労経速報1525号11頁/労働判例654号60頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務上の不正行為〕
 本件防寒コートのポケット内に本件三万五〇〇〇円を入れていたということ自体は、外観上、原告が本件三万五〇〇〇円を着服したと評される可能性が極めて高く、従って、原告が、本件三万五〇〇〇円を本件防寒コートのポケットに入れていたことを秘匿しようとした行動に出たことは、その行為自体が非難に値する行為であることは当然であるとしても、人間の行動様式として格別奇異であるというほどのことではないというべきである。
 従って、原告において右のような偽装工作をしたことが、本件三万五〇〇〇円を金庫に戻すのを失念したとの原告の主張と全く矛盾するということはできず、また、原告が本件三万五〇〇〇円を着服する意思でこれを本件防寒コートのポケットに入れたとの事実を直ちに推認させることにもならない。
 5 以上によれば、本件自認書、本件始末書及び本件反省文は、その作成の経緯及び内容に照らし、これらを直ちに全面的に信用することには躊躇を感じるところであり、また、他に原告に本件三万五〇〇〇円を着服する意思のあったことを認めるに足りる証拠もないのであるから、本件処分は、処分事由なくしてなされたものであり、無効というべきである。
 従って、原告被告間の本件雇用契約関係はいまだ存続している。