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ID番号 06259
事件名 労働者災害補償保険保険給付不支給決定取消請求控訴事件
いわゆる事件名 茨木労基署長事件
争点
事案概要  本態性高血圧症の基礎疾病を有する新幹線内清掃作業員が脳出血死したことにつき、業務起因性が認められるとされた事例。
参照法条 労働者災害補償保険法7条1項1号
労働者災害補償保険法12条の8第1項
体系項目 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 業務起因性
労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 脳・心疾患等
裁判年月日 1994年3月18日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 平成4年 (行コ) 10 
裁判結果 原判決取消
出典 労働判例655号54頁
審級関係 一審/06325/大阪地/平 4. 3.23/昭和63年(行ウ)72号
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-業務起因性〕
〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-脳・心疾患等〕
 6 結局、本件の事実関係を総合してみると、私生活上の活動においては、高血圧症を増悪させ、蓄積させた要因は見当たらず、本件疾病が、加齢による自然増悪の過程において、労働拘束勤務時間内にたまたま発生した脳血管損傷による脳出血であったと認めるには不自然であり、高血圧症にあったAにとって更に血圧の上昇の原因となる、夜勤、交代勤務による睡眠不足や、不自然な姿勢による作業が数か月続いた後における、寒暖差の大きい冬期の深夜作業が一段落した直後の点検待機中に、高血圧の増悪状態が極まったところで、精神的緊張と肉体的疲労が高じて一過性の血圧亢進が生じ、自然的経過を超えて遂に脳出血を誘発し、本件発症に至ったものと推認するのが経験則に合致するものというべきである。すなわち、Aの数か月にわたる訴外会社における業務と当日の業務が有力な共働原因ないし誘因となって、基礎疾患たる高血圧症の自然的経過を超えて急激に影響し、一過性の血圧亢進を引き起こしたものと認めるのが相当である。
 したがって、訴外会社におけるAの本件業務はAの死亡時期を早めたものであり、本件業務とAの死因原因との間には相当因果関係があるものというべきである。