全 情 報

ID番号 06304
事件名 賃金等請求事件
いわゆる事件名 横河電機事件
争点
事案概要  韓国に出張した労働者の時間外勤務手当の計算に当たり、会社が、移動時間は労働協約に規定された実勤務時間に含まれないとして計算したのに対して、右労働者が、移動時間は労働協約に規定された実勤務時間に含まれるとして計算した時間外勤務手当を請求した事例。
参照法条 労働基準法32条
体系項目 労働時間(民事) / 労働時間の概念 / 出張の往復時間
裁判年月日 1994年9月27日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成5年 (ワ) 2345 
裁判結果 棄却
出典 労経速報1542号3頁/労働判例660号35頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働時間-労働時間の概念-出張の往復時間〕
 労働協約の規定内容についてみると、一〇八条一項の「旅行中は所定就業時間勤務したものとして扱う。」との規定は、旅行中においては、国内・国外旅行を問わず、所定就業時間内において、随時休憩、移動することがあるが、その間従業員の自主的時間管理に委ね、仮に実労働時間が所定就業時間に満たない場合であっても、所定内賃金は減額しないことを定めたもの(同趣旨の規定は、本件協定の二条三項において確認的に規定されている。)であり、一一五条の「所定就業時間外及び休日の乗車(船)時間は就業時間として取扱わない。」との規定は、所定就業時間外及び休日における移動時間は、時間外(休日)勤務手当の支給対象となる実労働時間とならない旨規定したものと解されるところ、移動時間は労働拘束性の程度が低く、これが実勤務時間に当たると解するのは困難であることから、これらの条項から直ちに所定就業時間内における移動時間が時間外手当の支給対象となる実勤務時間に当たるとの解釈を導き出すことはできない。そして、本件協定の適法性・有効性については疑問を差し挟む余地はないと認められるところ、同協定は、海外旅行における時間外勤務の取扱いに関する特則であるから、同協定二条一項は、海外旅行の時間外手当の算定に当たり、優先的に適用されるべきものである。そして、実際上の取扱いも、同規定のとおり、移動時間を実勤務時間から除く取扱いがなされてきたことが認められる。もっとも時間外手当の支給申出は自主申告方式によっているため、必ずしも被告会社の厳密なチェックが及ばない場合が有りうるかも知れないが、その故をもって右認定を動かすに足りない。〔中略〕
 右事実に加え、本件出張当時、旅費規則(〈証拠略〉)二五条により、一旅行日当り金二〇〇〇円の海外出張手当が支給されており、これが右取扱いに対する代償的な措置となっていたことをも考慮に容れると、本件移動時間が時間外勤務手当の支給対象たる実勤務時間に当たらないとした被告会社の判断に、何ら労働契約違反はなく、相当なものであったということができる。