全 情 報

ID番号 06386
事件名 雇用関係存続確認等請求事件
いわゆる事件名 日本ロール事件
争点
事案概要  出向先会社の取締役の地位にあった者が、出向元会社の人事抗争の報復として出向先会社の取締役の地位を解任された際に、脅迫的な手紙を出向元会社の社長に出したこと等を理由として出向元会社から懲戒解雇され、その効力を争った事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
労働基準法2章
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 会社中傷・名誉毀損
配転・出向・転籍・派遣 / 出向中の労働関係
裁判年月日 1994年8月30日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成4年 (ワ) 14616 
裁判結果 認容
出典 労働判例668号30頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-会社中傷・名誉毀損〕
 右認定事実によれば、本件手紙は、原告との信頼関係を裏切り、A会社の取締役を解任したBやその親族らに何らかの危難が降りかかることを暗示するような内容であり、不当な人事に関する非難の意味を込めたものであって、全くの私信であるとはいいえず、また表現に穏当を欠くところがあり、一応、被告の就業規則六三条三号(「他人に対し脅迫を加え又はその業務を妨害した時」)に該当する。しかしながら、Bらの身辺に危険が差し迫っているような客観的状況は何もなく、Bらが、本件手紙によって畏怖を覚えたとは思えないこと、原告は、信頼していたBから裏切られ、深く失望するとともに気が動転し、Bの宗教的感情に訴えて抗議の意思表示をするべく本件手紙を提出したものと認められ、その動機には同情すべき点があるし、原告は、その後右手紙を発信したことを反省していること、本件手紙により、被告会社の業務活動に支障を及ぼしたような形跡は一切認められないことに照らすと、本件手紙の提出を理由としてなされた本件懲戒解雇は、使用者に許された懲戒権行使の権限の範囲を著しく逸脱したものであり、解雇権の濫用であると認められるから、本件懲戒解雇は無効というべきである。
〔配転・出向・転籍・派遣-出向中の労働関係〕
 原告の主張(五)についてみておくと、本件のような親会社と子会社間の在籍出向の場合には、出向先での行為は、出向元における行為と同視され、懲戒解雇事由の対象となりうるものと解すべきであるので、原告の右主張は採用しない。