全 情 報

ID番号 06435
事件名 地位保全等仮処分異議申立事件
いわゆる事件名 ケミカルプリント事件
争点
事案概要  作業能率を上げるよう重ねて指示・警告を受けたにもかかわらず、これに反抗的態度を示し、また不良品を発生させて大量の返品を受ける事態を招いたことが職務懈怠に当たるとして、懲戒解雇事由があるとされた事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務懈怠・欠勤
裁判年月日 1995年1月26日
裁判所名 東京地八王子支
裁判形式 判決
事件番号 平成2年 (モ) 2226 
裁判結果 取消,却下
出典 労経速報1557号7頁/労働判例675号46頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務懈怠・欠勤〕
 債権者らは、本作業期間中、債務者から作業量の指示を受け、かつ、これに従って作業能率を上げるように重ねて指示、警告を受けていたにもかかわらず、前記1(三)(四)に認定のとおり、一人一時間あたり一七本の割合を越えて作業をしたことがなく、しかも、同年八月から本件作業終了時まで目立った向上がみられなかったばかりか、右指示・警告に対し反抗的態度を示したこと、さらに、本件作業開始直後から作業内容について十分説明を受け、その後もAやBから何度も注意を受けていながら度々不良品を発生させ、最後にはタイラップ固定不良により大量の返品を受ける事態を招いたことが認められるところ、かかる債権者らの本件作業上の状況及び言動は、債務者の指示に反し、職務上の指示に従わない職務懈怠と言わざるをえない。
 確かに、別表のとおりたびたびストライキや有給休暇、病気による欠勤、出勤停止処分があり、また、二人で一日六〇〇本を越える割合で納期が定められた場合もあることを考えると、納期の遅れはやむをえない場合もあり、また、本件作業の性質上、ある程度の不良品の発生は避けられないとも言えるが、そもそも債権者らの作業能率は、債務者が指示した最小限の作業量一人当たり一時間二五本に比しても、一時間で八本から一一本も少なく、また、不良品の発生のうち、タイラップの固定不良は、二〇〇〇本を越える製品のうち三分の二に及んでおり、工具の不備によるものとは言え、これについて全く気付かず作業を継続した債権者らの責任も大きいと言えるから、これらの点は右判断を左右しない。
 そして、債権者らが、右のとおりの作業状況に終始した結果、前記認定のとおり、三鷹作業所には未処理のタイラップがたまって、C製作所から度々督促を受け、また、AとBは、頻繁に電話で督促したり、出来上がった分だけでも引き取るため、連日青梅の工場から三鷹作業所まで行かなくてはならない状態が続いていたのであるからC製作所から直ちに発注を取り止める旨の警告を受けていなかったことを考慮しても、かかる債権者らの本件作業上の状況及び言動は、債務者に負担をかけ、三鷹作業所の生産性を阻害するものであり、債務者会社内の秩序を乱したと言うべきである。
 (3) したがって、右の債権者らの本件作業上の状況及び言動は、就業規則五二条五号に該当するものと言うことができる。
 (二) 次に前記1(六)に認定したとおり、債権者らは、過去にも作業日報の作成を拒絶したとして譴責処分を受け、また、光作業所を訪れた際の行動について債権者Dは降職処分に、同Eは出勤停止処分に処せられ、他にも懲戒処分を受けている(右各懲戒処分の当否はともかく)ところ、さらに、債権者らは、前記のとおり、職務上の指令に従わなかったものであり、右は同条一〇号に該当すると認められる。
 3 以上の次第で、債権者らには、懲戒事由があり、かつ、その懲戒行為の性質・程度即ち、懲戒事由が二つあること、懲戒行為の期間・回数、債権者らには反省・改善の態度が見られないこと、懲戒事由発生に至るまでの経緯などに鑑みると懲戒解雇事由たりうるものと言うことができる。