全 情 報

ID番号 06463
事件名 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 同盟交通事件
争点
事案概要  定年制により退職した労働者による解雇に伴う地位確認の訴えにつき、訴えの利益を欠くとされた事例。
 乗車拒否等により無線車乗務員の登録取消しを受けたことを理由とする解雇につき、雇用の目的の大半が失われたとして、右解雇が有効とされた事例。
参照法条 労働基準法2章
民事訴訟法(平成8年改正前)225条
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 資格免許の未取得・取消
解雇(民事) / 解雇と争訟・付調停
裁判年月日 1995年6月29日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和63年 (ワ) 15021 
裁判結果 却下,一部棄却
出典 労経速報1569号3頁/労働判例683号45頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇と争訟〕
 被告は定年退職制度を設けており、従業員は満六〇歳に達した後の最初の三月三一日をもって退職することとなっているところ、原告は、平成四年八月一一日に満六〇歳に達したので、同五年三月三一日をもって原被告間の労働契約が終了したことは争いがないから、本件訴えのうち、労働契約上の権利存在確認請求部分は確認の利益を欠き不適法である。
〔賃金-賃金請求権の発生-営業の廃止と賃金請求権〕
 右実施規則によると、無線乗務員登録を受けようとする乗務員は、その営業所の代表者の推薦を受けてA会社理事長に登録の申請を行い(三条)、この申請を受けた理事長は、当該乗務員の前歴を調査し、特別教育を実施した後に無線車乗務員手帳を交付し、かつ無線車乗務員登録原簿に登録する。他方、実施規則によって各組合員は、A会社に登録された乗務員以外の者を乗務させることを禁じられている(二条)。したがって、組合員にとっては、無線車乗務員としての登録は当該乗務員をタクシー乗務員として業務に従事させるための不可欠の要件であり、これを乗務員からみれば組合員に雇用されてタクシー運転手として稼働することを望むならば、必ずA会社の無線車乗務員として登録されていなければならないことを意味する。登録乗務員に対する登録に関する処分権限はA会社理事長にあり、理事長は当該乗務員の不行跡の程度により登録取消し、特別教育、登録停止の処分を行うことができる。これらの処分のうち、最大のものが登録取消しであり、組合員にとってその雇用する乗務員が登録取消しの処分を受けるということは、以後自社のタクシーに乗務させることができなくなることを意味するため、登録取消処分は当該乗務員との間の雇用目的の大半を失わせる処分といえる。
 ところで、A会社の運営規定では、罰則規定を設け、タクシー乗務員について所定の違反行為があった場合には、悪質さの程度や違反行為の頻度により、特別教育、七日間ないし三〇日間の登録停止、登録取消しのいずれかの処分がされる旨を規定している。タクシー乗務員が乗客に対し途中下車を強要する行為は、乗車拒否や客に対する暴言、暴力等と並んで最も重大な違反行為であり、当該乗務員に対し最も重い処分である登録取消しをすることとされている。
 また、A会社では、新任乗務員に対し、登録に先立って三日間の研修を行うが、その際使用される教本(〈証拠略〉)にも、途中下車強要に対しては登録取消処分がされA会社の組合員のタクシーには乗務できなくなる旨が記載されており、また途中下車強要の具体例として、「感情のもつれ等からお客様が途中で降車した場合」が挙げられており、「一旦実車した場合には、やむを得ない事由のない限り目的地までお送りする義務があります。」と記載されている。また、右研修を修了した者に対しては無線車乗務員手帳(〈証拠略〉)が交付されるが、この手帳の中にも途中下車強要に対しては登録取消処分がされる旨の記載がある。
 3 そこで、本件解雇の有効性について検討する。
 以上認定したところによると、原告には被告が本件解雇事由の中で主張する乗車拒否((一)、(一八))、到着遅延((三)、(九)、(一二)ないし(一四)、(一六)、(二〇))、虚偽通信((八))、感情運転((22))、乗務拒否((一〇))、駐車待機違反((一七))、勤務態度不良((二)、(四)、(五)、(一五)、(一九)、(21))、途中下車強要((23))が存したのであり、このうち、とりわけ乗車拒否は就業規則(〈証拠略〉)の上でも懲戒解雇事由ともなっている(一一一条、一一二条)。
 そして、原告は、右(23)の途中下車強要行為を理由に原告がA会社から無線車乗務員としての登録を取り消され、無線車に乗務することができなくなったというのである。してみると、被告が原告を雇用した目的の大半は失われたと言うことができる。
 そうすると、本件解雇には解雇事由が存したのであり、これが無効となる事由の存しない限り、本件解雇は有効であるというべきである。