全 情 報

ID番号 06469
事件名 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 東亜エレクトロニクス事件
争点
事案概要  欠勤が多く、作業能率も低いことを理由とする解雇につき、権利濫用にも当たらず有効とされた事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
民法1条3項
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の濫用
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務懈怠・欠勤
裁判年月日 1995年7月14日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成5年 (ワ) 22874 
裁判結果 棄却
出典 労経速報1572号3頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務懈怠・欠勤〕
 右に認定したところによれば、原告は平成四年一月以降、ほぼ一〇日に三日の割合(有給休暇を除くと五日に一日の割合)で仕事を休んでおり、出勤しても、懈怠等により作業効率は他の従業員の半分程度であって、被告は原告に対して安心して仕事を任せられなかったし、他の従業員の負担ともなっており、かような勤務状況の悪さは被告による様々な努力にも拘わらず改善されず、かえって本件解雇前の三カ月間(平成五年四月一日から本件解雇日まで)における原告の欠勤率は、被告の業務日の四六パーセント以上にまで上昇していて、より悪いものとなっており、今後右問題点が改善されることは殆ど望めない状況であったといえる。原告の勤務状況が以上のようなものであったことに加え、原告が過去においてもやはり勤務態度等の不良のために被告から解雇予告をされたという経緯や、前記認定にかかる諸般の事情を総合考慮すれば、原告については、就業規則一〇条四号の「勤務成績または能率が不良で就業に適しない」場合に該当するものと認めることができる。
 なお、原告は風邪を理由に被告を休むことが多かったが、診断書が提出されていないことや弁論の全趣旨によれば、右の理由を直ちに信用することはできない。したがって原告が就業規則一〇条三号の「精神または身体の障害により業務に堪えられない」状態であったと認めることはできない。
 また(書証略)及びX原告本人尋問の結果によれば、被告は、本件解雇の際、原告に対し、就業規則一〇条の「労働基準法一二条に規定する平均賃金の三〇日分以上」との要件を満たす二二万三七四〇円を提供したことが認められる。〔懲戒・懲戒解雇-懲戒権の濫用〕
 本件解雇が原告の悪意なき行為に対する過剰なまでの反応であると主張し、また、就業規則による禁止規定に著しく反する行為がないにもかかわらず、被告はいきなり原告を解雇したと主張しているが、これらが被告による本件解雇権の行使が権利濫用に当たるとする旨の主張であるとしても、前記認定事実の下において、本件解雇権の行使が均衡を失しているとは認められないし、原告本人尋問の結果により認められる、原告の片道の通勤時間が二時間から三時間を要する長距離通勤であったという事情及び原告が歯科にかかる必要があったという事情に加え、被告の原告に対する指導、監督の強化がかえって原告に心理的負担をかけることとなり、欠勤を増やす原因となったことが窺われないではないことを考慮しても、本件解雇権の行使が権利濫用であるとは認められず、他に右権利濫用を認めるに足りる事情は本件証拠上認められない。