全 情 報

ID番号 06479
事件名 懲戒処分等取消請求事件/研修命令取消請求事件
いわゆる事件名 佐伯町立津田小学校事件
争点
事案概要  小学校の教諭が、(1)校長が行った担任を解く旨の、また、教育事務所等で研修を命じる旨の各職務命令の取消しと、(2)県教育委員会を相手として、第一次研修命令と右担任解任命令に従わず、授業を混乱させたことを理由としてなされた停職三カ月の懲戒処分の取消しを求めた事例。
参照法条 地方公務員法29条1項
地方公務員法29条2項
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務妨害
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒手続
裁判年月日 1986年11月19日
裁判所名 広島地
裁判形式 判決
事件番号 昭和53年 (行ウ) 16 
昭和53年 (行ウ) 23 
裁判結果 一部棄却,一部却下(控訴)
出典 行裁例集37巻10・11号1336頁/労働判例492号52頁
審級関係 上告審/05760/最高二小/平 3. 4.26/平成2年(行ツ)210号
評釈論文 若井彌一・学校経営42巻2号80~87頁1997年2月
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-業務妨害〕
 右認定事実によると、原告は本件第一次研修命令及び本件担任解除命令に従わず、再三にわたって授業を混乱させ、児童に不安を与えるとともに教師に対する不信の念を強めさせたことは明らかであり、ひいては保護者及び地域住民の信託に背いたものということができ、これらは地公法二九条一項各号に該当するものと認めることができる。
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒手続〕
 地公法二九条二項は、「懲戒の手続及び効果は、法律に特別の定がある場合を除く外、条例で定めなければならない。」とし、同法四九条一項は「任命権者は、職員に対し懲戒その他その意に反すると認める不利益な処分を行う場合においては、その際、その職員に対し処分の事由を記載した説明書を交付しなければならない。」と定めておるところ、広島県においては、職員の懲戒に関する手続及び効果に関する条例が制定されていて、その二条に、「戒告、減給、停職及び懲戒処分としての免職の処分は、その旨を記載した書面を当該職員に交付して行わなければならない。」と定めているが、懲戒処分に際し告知、聴聞の手続をとるべき旨を定めたものはない。従って法令上右手続をとることが義務づけられているわけではなく、右手続をとるかどうかは被告委員会の裁量に委ねられていると解するのが相当である。
 本件懲戒処分の対象とされた事実はいずれも被告校長が現認しており、被告校長はこれらを逐次広島教育事務所等に報告していたことは被告校長本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によりこれを認めることができ、原告も右懲戒の対象とされた事実そのものについては大部分これを認めており、原告に告知、聴聞の機会を与えておれば、被告委員会の事実認定が異なったものとなり、ひいては処分内容に影響を及ぼす可能性があったとは認められないこと等諸般の事情を考慮すると、右手続を経なかったことに裁量権の誤りはなく本件懲戒処分の手続が適正かつ公正を欠いた違法があるということはできない。