全 情 報

ID番号 06504
事件名 賃金支払請求事件
いわゆる事件名 安威川生コンクリート事件
争点
事案概要  原告ら労働者が組織する労働組合が行った全日・時限ストに対して会社が昭和六二年一二月二〇日ロックアウトを通告し、六三年一月以降の賃金を支払わず、また、原告らが六三年一一月三〇日付けで合意退職したとして扱ったため、原告らがロックアウト中の賃金および退社した二名を除く全員の地位確認を求めた事例。
参照法条 労働基準法3章
民法536条2項
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / ロックアウトと賃金請求権
裁判年月日 1995年2月27日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成1年 (ワ) 1014 
裁判結果 一部認容,一部棄却
出典 労経速報1566号3頁/労働判例678号78頁
審級関係
評釈論文 紺屋博昭・労働法律旬報1384号10~16頁1996年5月25日/土田道夫・ジュリスト1133号205~208頁1998年5月1日
判決理由 〔賃金-賃金請求権の発生-ロックアウトと賃金請求権〕
 個々の具体的な労働争議の場において、労働者の争議行為により使用者側が著しく不利な圧力を受けることになるような場合には、衡平の原則に照らし、労使間の勢力の均衡を回復するための対抗防衛手段としての相当性が認められる限りにおいては、使用者の争議行為も正当なものとして是認されると解すべきであり、使用者のロックアウトが正当な争議行為として是認されるかどうかも、右に述べたところに従い、個々の具体的な労働争議における労使間の交渉態度、経過、組合側の争議行為の態様、それによって使用者側の受ける打撃の程度等に関する具体的諸事情に照らし、衡平の見地から見て労働者の争議行為に対する対抗防衛手段として相当と認められるかどうかによってこれを決すべく、このような相当性を認め得る場合には、使用者は、正当な争議行為をしたものとして、右ロックアウト期間中における対象労働者に対する個別的労働契約上の賃金支払義務を免れるものというべきである〔中略〕
 本件ロックアウトが実施された当時、被告会社は、本件ストライキにより多大の打撃を受けており、原告らに対する賃金債務を免れる措置を早急に採らなければ、原告側が前記のような態様の争議行為を繰り返すことで、その企業の存立を脅かされる切迫した状況にあったものと認められる。〔中略〕
 以上の点など本件争議における諸般の事情を総合すれば、被告会社の本件ロックアウトは、衡平の見地から見て労働者の争議行為に対する対抗防衛手段として相当性が認められる正当な争議行為であると解すべきであり、したがって、被告会社は、原告らに対する本件ロックアウト期間中の賃金支払義務を免れるものというべきである。
 4 したがって、原告らの被告会社に対する賃金請求はその余の点を判断するまでもなく、理由がなく、また、原告らの被告田中に対する請求も、被告会社に対する右賃金請求が理由のあることを前提とするものであるので、その余の点を判断するまでもなく、理由がない。