全 情 報

ID番号 06524
事件名 労働協約無効確認請求事件
いわゆる事件名 安田生命保険事件
争点
事案概要  生命保険会社で保険料の集金等の業務に従事していた営業職員に対して、会社が、通称SSエリア制度という新営業制度を導入したことにつき、就業規則の不利益変更の効力等が争われた事例。
参照法条 労働基準法93条
体系項目 就業規則(民事) / 就業規則の一方的不利益変更 / 賃金・賞与
裁判年月日 1995年5月17日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和62年 (ワ) 3669 
裁判結果 棄却
出典 労経速報1565号3頁/労働判例677号17頁
審級関係
評釈論文 高島良一・経営法曹115号26~40頁1996年12月/山川隆一・ジュリスト1080号129~132頁1995年12月1日/中内哲・民商法雑誌114巻4・5号274~286頁1996年8月
判決理由 〔就業規則-就業規則の一方的不利益変更-賃金・賞与〕
 賃金など労働者にとって重要な権利、労働条件に関して不利益を及ぼす就業規則の変更については、当該条項が、その不利益の程度を考慮しても、なおそのような不利益を労働者に法的に受忍させることを許容できるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものである場合において、その効力を生ずるものというべきである(最高裁判所大法廷昭和四三年一二月二五日判決・民集二二巻一三号三四五九頁、同第三小法廷昭和六三年二月一六日判決・民集四二巻二号六〇頁参照)。
 そこで、本件についてみると、SSエリア制度を内容とする本件就業規則は、前記第二の「基礎となる事実関係」中の4の(一)に認定したとおり、被告会社において制定・変更され、社内労働組合を通じるなどして従業員に周知されたものと認められるが、右制定・変更が原告にとって不利益なものであるとしても、これが合理的なものであれば、原告においてこれに同意しないことを理由として、その適用を拒むことは許されないと解すべきところ、右制定・変更が合理的なものであるか否かを判断するに当たっては、変更の内容及び必要性の両面から検討すべきであり、右変更により従業員の被る不利益の程度、右変更との関連の下に行われた賃金等の労働条件の改善状況のほか、労働組合との交渉の経緯、同業他社の取扱い等の諸事情を総合勘案する必要があるというべきである。〔中略〕
 本件就業規則による原告の不利益の程度、本件就業規則の制定の必要性、その内容の合理性を総合して勘案したところによれば、本件就業規則は、原告が受忍すべき高度の必要性に基づいた合理的な内容のものであるということができ、原告においてこれに同意しないことを理由としてその適用を拒むことができないというべきである。