全 情 報

ID番号 06650
事件名 不当労働行為救済命令再審査申立棄却命令取消請求事件
いわゆる事件名 岩井金属工業事件
争点
事案概要  組合掲示板の撤去要求を拒否した組合委員長に対する解雇を不当労働行為にあたるとした事例。
 組合青年部長を班長職から降格させたことを不当労働行為とした事例。
参照法条 労働基準法2章
労働組合法7条1号
労働組合法7条3号
体系項目 労働契約(民事) / 人事権 / 降格
解雇(民事) / 解雇事由 / 違法争議行為・組合活動
裁判年月日 1996年3月28日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成6年 (行ウ) 302 
裁判結果 棄却
出典 労働判例694号65頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-違法争議行為・組合活動〕
 1 A委員長は、前記「前提となる事実」4(一)のとおり、平成二年一〇月一三日、第一機械掲示板の撤去を求めたB社長に対し、掲示板の撤去について団交で話し合って欲しい旨述べて右掲示板の撤去を拒んだところ、B社長から、いきなりその場で解雇を申し渡されたものである。前記「前提となる事実」2(一)(三)、4(一)の各事実によれば、第一機械掲示板は、C社長が同年六月の団交でその利用を承認し、その後約四か月間原告から異議を述べられることなく組合掲示板として利用され、原告から撤去を求められた同年一〇月一一日以降、組合が団交を申し入れていたものである。
 2 右のような従前の経緯に照らすと、原告会社が組合に対し右掲示板の使用を許諾し、組合が実際にこれを使用して組合活動の手段としている以上、原告会社は合理的な理由もなくその撤去を求めることは許されないものというべきであるから、A委員長が右のように述べてその場で撤去に応じなかったことは、組合役員としてむりもない対応というべきであって、そのことを同人に対する解雇の理由とすることはできないことは明らかである。B社長は、原告の社長就任の当日から、A委員長に対して組合の解散を要求し、その九日後にA委員長の右解雇に及び、そのほかにもA委員長の解雇の前後にわたって、組合を敵視しその活動を牽制する言動を行っていることに照らすと、A委員長に対する右解雇は、同人を原告会社から排除し、組合に打撃を与えようとしてなされたものであることは明らかであって、労働組合法七条一号及び同三号に該当する不当労働行為であるというべきである。
〔労働契約-人事権-降格〕
 1 D青年部長は、前記「前提となる事実」8のとおり、平成二年一〇月二七日、E係長から班長としての職務の一つである日報を作成する作業を止められ、同月二九日には、F部長から、考え方を変えないのなら班長としての指示はできないとして、班長としての仕事を止められたものであり、班長職を降格したものということができる。
 原告は、右降格が会社の人事上の問題であると主張するが、このような人事措置を行う合理的な理由は証拠上明らかとならず、班長職は、班長手当が支給され、事実上他の一般の現場従業員に対して仕事を指揮・指導する立場であったと認められるから、右の経緯でD青年部長から(ママ)班長から降格させたことは、班長手当が従前どおり支給されたとしても、同人に対して仕事上の差別扱いをしたものであって、しかも、組合活動を萎縮させる原因となりうることは明らかである。したがって、D青年部長を班長から降格させたことは、労働組合法七条一号及び同三号に該当する不当労働行為というべきである。