全 情 報

ID番号 06660
事件名 地位確認等請求控訴仮執行の原状回復申立事件
いわゆる事件名 みちのく銀行事件
争点
事案概要  就業規則の改定によって、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として許されないが、それが合理的なものであるかぎり、個々の労働者においてその適用を拒否できないとした事例。
 五五歳以上の者の基本給の凍結、専任職制度の創設等につき、不利益の程度は小さくないが高度の必要性があり、合理性を有するとした事例。
参照法条 労働基準法89条
労働基準法93条
体系項目 就業規則(民事) / 就業規則の法的性質・意義・就業規則の成立
就業規則(民事) / 就業規則の一方的不利益変更 / 賃金・賞与
裁判年月日 1996年4月24日
裁判所名 仙台高
裁判形式 判決
事件番号 平成5年 (ネ) 231 
平成7年 (ネ) 521 
裁判結果 一部棄却,一部取消,却下(上告)
出典 労働民例集47巻1・2号135頁/タイムズ929号160頁/労経速報1595号3頁/労働判例693号22頁
審級関係 一審/06079/青森地/平 5. 3.30/昭和63年(ワ)465号
評釈論文 鎌田耕一・法律時報69巻4号92~95頁1997年4月/青野覚・季刊労働法180号171~174頁1996年11月/長久保尚善・平成8年度主要民事判例解説〔判例タイムズ臨時増刊945〕398~399頁1997年9月/武井寛・労働法律旬報1399・1400号48~55頁1997年1月25日
判決理由 〔就業規則-就業規則の法的性質〕
 就業規則の改定によって、労働者の権利・利益を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として許されないが、労働条件の集合的処理を建前とする就業規則の性質からいって、当該条項が合理的なものである限り、個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒むことはできないと解される。そして、右合理性の判断に当たっては、就業規則の変更によって労働者の被る不利益の性質、内容及び程度と変更の必要性及びその内容とを比較考量し、変更に至る経緯をも合わせ総合してこれを決すべきものである。
〔就業規則-就業規則の一方的不利益変更-賃金・賞与〕
 従来、定年が五五歳であったところ、これを六〇歳に延長するに当たり、いわばその見返りとして賃金を五五歳時の半額程度に押えることとして制度改革を進める企業が多数あることは公知の事実であるが、本件はそれと異なり、すでに六〇歳定年制が実施されていた銀行が五五歳到達時からの賃金を低く押さえようとするものであって、該当する労働者の不利益は決して小さくはない。しかしながら、以上示したところによると、第一審被告には、専任職制度の創設という方法によって組織改革を行うにつき、高度の必要性があったものということができ、この制度採用によって行員が受ける不利益の内容及び程度、同時に行われた代償措置、同業他行の同年配行員との比較、多数組合員を擁する労組との合意等の諸事情を総合すると、この制度導入に伴う就業規則の改定及び賞与の支給率の変更は合理性を失わないものと認めるのが相当である。
 したがって、本件就業規則(これと一体をなす内部規定を含む。)の改定につき、第一審原告らがこれに同意していないことを理由として、その適用を拒むことはできず、第一審原告らに対する専任職への発令は有効と認めるべきである。