全 情 報

ID番号 06714
事件名 賃金支払等請求控訴事件
いわゆる事件名 国鉄直方自動車営業所事件
争点
事案概要  年休を取得した労働者がその所属する事業場におけるストライキの職場集会に参加し激励したことにつき、実質的にみるならば他の事業場における争議行為の支援活動を行ったものとほとんど異ならないとして、これを無断欠勤扱いとして懲戒処分をすることは許されないとした事例。
参照法条 労働基準法39条4項(旧3項)
労働基準法89条1項9号
体系項目 年休(民事) / 年休の自由利用(利用目的) / 年休利用の自由
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務懈怠・欠勤
裁判年月日 1992年9月24日
裁判所名 福岡高
裁判形式 判決
事件番号 平成2年 (ネ) 296 
平成2年 (ネ) 362 
裁判結果 一部認容,一部棄却
出典 労働判例702号30頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔年休-年休の自由利用(利用目的)-年休利用の自由〕
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務懈怠・欠勤〕
 一審原告らは、その所属する事業場である直方自動車営業所において行われた本件ストの際における職場集会等に参加して、本件スト対象者の激励等の行為をしたものであるけれども、一審原告らと本件スト対象者とではその業務の内容が異なり(ちなみに、〈人証略〉の証言によると、同営業所における年休申込簿は一審原告ら等の運転係用、営業係(バス車掌)用及び日勤者用で区別されていたことが認められ、当局が時季変更権を行使するかどうかの判断も右職種ごとになされていたことがうかがえる。)、前示のとおり、一審原告らの本来の業務であるバス運行に関しては何ら業務の阻害はなかったのであるから(なお、本件スト対象者である日勤者の担当業務に関しても問題とされるような業務阻害は生じていない。)、一審原告らの行為は、実質的にみるならば、他の事業場における争議行為の支援活動を行った場合とほとんど異ならないともいえよう。〔中略〕
 次に、本件懲戒処分について検討するに、一審原告X(当審)、一審被告Y各本人の供述及び弁論の全趣旨によると、一審被告事業団は、一審原告らの本件年休の取得が正当な年休権の行使ではなく、したがって本件八月五日は勤務を要する日となるのに一日勤務しなかったとして不参とし、このことを理由として本件懲戒処分をしたものであることが認められる。なお、このことは、前示のとおり、直方自動車営業所において当日一審原告らと同様に年休を取得して職場集会等に参加した一般組合員である車掌が一審原告らと同じ戒告の処分を受けたのに、本件ストに参加した(現実に職場を離脱した)スト対象者に対しては懲戒処分ではない訓告しかなされず、また年休を取得せずに職場集会等に参加した者については何らの処分もなされていないこと、さらに、同営業所福丸支所の職員で国労門司地方本部中央支部自動車分会福丸班の副班長であったA及び同書記長であったB、並びに同営業所博多支所の職員で同分会博多班の副班長であったIは、いずれも本件八月五日右各支所で行われた本件ストと同態様のストの際の職場集会等に参加し、本件一審原告らと同様な行動をしたが、いずれも当該時間帯が勤務時間外でかつ年休も取得していなかったところ、何らの処分も受けなかった(同じ福丸支所でも、年休を取得して本件一審原告らと同様の行為をした班長のCは戒告処分を受けた。)事実(右は、〈証拠・人証略〉、一審原告Xの供述(原審及び当審)並びに弁論の全趣旨により認める。)によっても裏付けられるところである。
 しかし、前示のとおり、一審原告らの本件年休の取得は有効なもので、そうすると、一審原告らが不参(無断欠勤)とされる理由はないから、本件懲戒処分はその根拠を欠くものとして、無効であるといわざるを得ない。