全 情 報

ID番号 06732
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 奈良県建設業振興会セクハラ事件
争点
事案概要  就職氷河期に就職した大卒女性従業員が、上司からセクハラを受け退職を余儀なくされたとして損害賠償を請求した事例。
参照法条 民法709条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 均等待遇 / セクシャル・ハラスメント、アカデミック・ハラスメント
裁判年月日 1995年9月6日
裁判所名 奈良地
裁判形式 判決
事件番号 平成6年 (ワ) 419 
裁判結果 一部認容(確定)
出典 タイムズ903号163頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労基法の基本原則-均等待遇-セクシャル・ハラスメント〕
 (五) 原告は平成六年六月二一日、勤務中に被告から応接室に呼び出されて、「なぜ抱きしめることをいやがるのか」「父親のように思っているのだから反対に抱きついてきてほしかった」などと言われた。また、同年七月初めにも被告から応接室に呼び出され、「まだ処女なのか」「性欲が出た時はどうしているのか」と尋ねられた。原告はこれらの質問には答えずただ黙っていたが、被告は続けて「君が以前酒に酔って吐いたことがあったが、僕はその吐いた後の唇にもキスができるくらい君のことを大事に思っている」と告げた。〔中略〕
 (三) 平成六年六月一七日の伊勢行きは、最初から被告の長男家族四名とAもその日のうちに別荘で合流するという予定で誘ったものである。別荘には昼ごろに着き、いったん外に出て原告と食事をしたのち、午後三時ころ別荘に戻ってきてトレーニングウェア姿で掃除をしたりしていた。そして掃除を終えて被告が居間のソファに座って休んでいると、原告が右前のソファに座ったため、「こちらの方が景色がよく見えるから隣にお掛け」と誘ったところ、原告が被告の隣に座った。被告はこの時、「肉親の間では子育ての期間にスキンシップというのがちょいちょいあるね」と言いながら、原告の肩を持って頬擦りをし、赤ん坊を抱くようにして抱き上げたが、原告が恥かずかしそうな態度を示したので、二、三秒ですぐに下ろした。以上はいずれも冗談でしたものであり、その後はまた笑顔で会話を続け、原告も合流した長男家族やAと共に別荘で二泊し、同月一九日に一緒に奈良へ戻った。〔中略〕
 4 そうすると、争点1の(一)ないし(三)に関しては、原告が前記1の(三)ないし(五)において供述しているような事実があったものと認めるのが相当である。そして、右1の(三)及び(四)における被告の行為が、原告の明確な拒絶の態度にあっていないとはいえ、その意思に反するものとして不法行為を構成することは明らかであり、同じく1の(五)における被告の言辞も、その内容、振興会における被告と原告との関係、性差、年齢差等に照らすと、原告に著しい不快感を抱かせるものとして不法行為を構成するというべきである。〔中略〕
 原告が、就職難といわれる時期に大学を卒業し、純粋な気持ちのまま初めて就いた職場において、被告から前示のような不法行為を受けたことや被告のその後の対応等、本件にあらわれた一切の事情を考慮すると、原告に対する慰藉料額は、一〇〇万円と認めるのが相当である。