全 情 報

ID番号 06745
事件名 退職金等請求事件
いわゆる事件名 東京コンピュータサービス事件
争点
事案概要  営業部次長が退職後、新会社を設立し、元の会社の従業員を引き抜いたとして退職金を支給しなかったケースにつき、計画的、意図的に引き抜くなどの行為があったことを認めるに足りる証拠は存在しないとして、右退職金請求は権利の濫用ではないとした事例。
参照法条 労働基準法89条1項3の2号
労働基準法89条1項9号
体系項目 賃金(民事) / 退職金 / 懲戒等の際の支給制限
裁判年月日 1995年11月21日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成1年 (ワ) 1664 
裁判結果 認容,一部棄却
出典 労働判例687号36頁/労経速報1597号20頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔賃金-退職金-懲戒等の際の支給制限〕
 (三) 被告会社は、原告が被告会社在職中に計画的に被告会社やその関連会社であるA会社、B会社及びC会社の従業員技術者に対し、D会社及びE会社に移籍するよう執拗に働きかけて、別表3記載の多数の従業員技術者を引き抜いたと主張している。
 なるほど、証拠(〈証拠略〉)によると、原告が、昭和六二年一一月末ころから、被告会社を退職した昭和六三年一月二〇日までの間に、被告会社従業員や関連会社であるA会社等の従業員らに対し、退社の意思を伝えたり、自ら新会社を設立するつもりであることや、従業員を大切にするなどの新会社の経営方針を話したりしたこと、同年一二月二九日に開催された被告会社京都営業所の納会においても、同営業所の従業員に対して同様の話をしたことが認められる。このような事実からすると、原告が右在職中に被告会社従業員及び関連会社従業員に対して設立予定の新会社(D会社)へ移籍するよう何らかの勧誘をしたことが推測されないではない。しかし、懲戒解雇に値する「会社の不利益になるような言動(就業規則四六条三号)」とは、その性質上、相当重大なものであることを要すると解されるところ、原告が被告会社在職中に単なる勧誘の域を超えて被告会社及び関連会社から多数の従業員技術者を意図的、計画的に引き抜くなどの行為をしたことや、就業規則四六条三号の他の遵守事項又は同条八号、一一号の遵守事項に違反する行為をしたことを認めるに足りる証拠は存しない(なお、被告会社は、原告の被告会社退職後の引き抜き等の行為を理由に、原告を懲戒解雇することはできないのであるから、原告の被告会社退職後の引き抜き等の行為を理由として、退職金請求が権利の濫用に該当するということができないことは当然である。)。