全 情 報

ID番号 06750
事件名 地位保全等仮処分命令申立事件
いわゆる事件名 医療法人南労会事件
争点
事案概要  就業場所を特定した労働契約につき、本人の同意なく配転を命じたことは、右労働契約に違反し、また業務上の必要性も認められず無効とした事例。
 医師の指示に基づかないで医療行為をしたことを理由になされた看護婦に対する懲戒解雇につき、懲戒事由には当たらず、不当労働行為として無効とした事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法89条1項9号
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の限界
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 違法争議行為・組合活動
裁判年月日 1995年12月8日
裁判所名 大阪地
裁判形式 決定
事件番号 平成7年 (ヨ) 2385 
平成7年 (ヨ) 2470 
裁判結果 認容,一部却下
出典 労働判例689号45頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令権の限界〕
 以上によると、債権者三名と債務者間において、それぞれ就業場所をA診療所とする旨の雇用契約が成立したものと一応認めることができる。
 従って、本人の同意をとらずになされた債権者青戸及び債権者杉坂に対する本件配転命令は、いずれも右契約違反である。
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-違法争議行為・組合活動〕
 〔3〕 債権者らに対する本件懲戒解雇の効力について
 ア 債務者は、債権者らが、債権者らに対する本件配転命令に従わないことを理由に懲戒解雇しているが、本件配転命令が無効であることは前記のとおりである。
 イ 債務者は、債権者らが就労闘争を繰り返し、診療所所長の再三の注意、警告を無視し、医師の指示にもとづかない医療行為を続けたことを理由として掲げている。
 しかしながら、労働時間について、長期間にわたり組合側が主任制のもとで決定し、現実に行われてきたことは前記のとおりであり、婦長導入問題後に、債務者が債権者ら組合員排除を意図して、債権者らに対し順次配転命令をなして、A診療所看護科から排除し、その結果としてB婦長を中心とする新組織導入をめざしたことに関する一連の経過についても前記のとおりである。
 債務者の掲げる右理由は、長年にわたる労働争議の過程において従前行われてきた現実の診療の実態が、債務者の行なったA診療所看護科からの組合員排除の措置によって紛糾、混乱した結果を捉えて、これを就労闘争、医師の指示にもとづかない医療行為との表現のもとに非難するものであり、到底懲戒解雇事由に値するものではない。
 さらに、債権者らは、債務者からの医師の指示にもとづかない医療行為を禁止する旨の明確な意思表示がなされた後は、看護婦業務を行なうことを中止している(〈証拠略〉)。
 ウ 以上によれば、債権者らに対する本件懲戒解雇は懲戒事由が存在しないにも拘らずになされたものであるから、無効である。
 エ 本件懲戒解雇は、債務者が、B婦長を中心とした組織体制を導入することを目的として、これに反対する組合活動を行っている債権者ら組合員をA診療所看護科から排除すべきことを意図してなされたものであり、不当労働行為に該当するから無効である。