全 情 報

ID番号 06778
事件名
いわゆる事件名 新潟県教育委員会事件
争点
事案概要  新潟県高教組による県の人事委員会勧告の完全実施を求めて行われた争議行為を理由とする組合役員らに対する減給又は戒告処分につき、右処分を適法とした事例。
参照法条 日本国憲法28条
地方公務員法29条
地方公務員法37条
労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の濫用
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 違法争議行為・組合活動
裁判年月日 1996年3月19日
裁判所名 新潟地
裁判形式 判決
事件番号 昭和59年 (行ウ) 8 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 タイムズ919号137頁/労働判例695号91頁
審級関係
評釈論文 吾郷眞一・平成8年度重要判例解説〔ジュリスト臨時増刊1113〕266~267頁1997年6月
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-違法争議行為・組合活動〕
 3 右認定事実によれば、原告らは、本件争議行為当時、執行機関である執行委員会の構成員として、本件争議行為の実施を内容とする運動方針案等を決定し、定期大会、定例県委員会あるいは臨時大会を開催して右運動方針案等を提案し、議決された運動方針等に従って本件争議行為突入の指令を発したのである。このような本件争議行為の実施に至るまでの原告らの一連の行為は、本件争議行為を企て、その遂行を共謀したものであるとの評価を免れることはできず、いずれも、地方公務員法三七条一項の規定に違反するというべきである。すなわち、争議行為を企てるとは、争議行為の実行計画の作成、その議決のための会議の開催など、争議行為発生の具体的危険を生じさせる行為を指し、遂行の共謀とは、争議行為実行のための具体的計画の謀議行為を指すと解されるところ、原告らは前記のとおり、日教組が決定したストライキ戦術を新潟高教組の具体的運動方針とするため、前記各会議を開催して右運動方針を提案し、議決された運動方針を組合員らに周知徹底させ、かつ、その実行に向けてオルグ活動を呼びかける文書を作成、配布しているのである。原告らのこれらの行為は、実質的には、争議行為実施の日時・態様等を具体的に企画し、それに向けて組合員らを組織化するものであって、争議行為実施を惹起する具体的危険を有する行為、いわば争議行為の原動力又は支柱となる行為というべきであるから、地公法三七条一項の規定に違反する行為に該当することは明らかである。
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒権の濫用〕
 3 以上の観点から検討するに、まず、本件争議行為が、法によって禁止されている違法なものであることは否定できず、被告(直接には校長)からの事前の警告を無視して二度にわたり敢行され、かつ、県立高等学校のほとんどにおいて実施された大規模なものであること、原告らは、それぞれ新潟高教組の執行委員会の構成員として本件争議行為の実施に際し指導的役割を果たしており、他方、原告らに対する本件処分は、軽いもので戒告、重いもので三か月の減給一〇分の一に止まっていること(原告らは懲戒処分にともなう昇給の延伸を問題とするが、それは懲戒処分自体の効力ではないし、そもそも教職員は当然に昇給する権利を有するものでもない。)、さらに、当時の国及び県の財政状況は極めて逼迫しており、政府あるいは県当局の人勧凍結あるいは一部不実施の決定にも相応の理由があったといわざるを得ないことなどの諸般の事情を考慮すれば、前記のように、原告らの本件争議行為の企図及び遂行をことさら強く非難できない事情があるとしても、なお、本件処分が社会通念上著しく妥当性を欠き、あるいは、裁量権を濫用したとは認められない。