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ID番号 06789
事件名 報酬金請求控訴事件
いわゆる事件名 シャネル事件
争点
事案概要  香水、化粧品、女性用衣類等の輸入・販売を業とする会社に雇用され年俸一九〇〇万円で勤務していた労働者が解雇の通告を受けたことにつき、その効力を争い、未払の報酬等を請求した事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 退職 / 合意解約
裁判年月日 1996年3月27日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 平成7年 (ネ) 2658 
裁判結果 控訴棄却(上告)
出典 時報1567号140頁
審級関係 一審/06727/東京地/平 7. 5.26/平成5年(ワ)18131号
評釈論文
判決理由 〔退職-合意解約〕
 当裁判所も、控訴人の本訴請求は、失当としてこれを棄却すべきものと判断する。〔中略〕
 前記認定のとおり、平成三年三月二九日に被控訴人が控訴人に対し手渡した書簡(甲第三号証、乙第一号証の一)の中には、控訴人の解雇は同年六月三〇日に効力を生ずるが、それまでの間、控訴人は、直ちに新たな職を探し他に職を得ることも自由であり、同日正午以降被控訴人の事務所へ出勤しなくてもよい旨の記載がなされていたのであり、その趣旨は、控訴人が右解雇に同意する場合には以後出勤しなくてもよいとの申出をしたにすぎないものであって、解雇に異議がある場合でも出勤を免除するとまで述べているものではないと解される。したがって、右書簡を受領した控訴人が、直ちに私物を職場から持ち出し、以後出勤しなくなったときは、前記認定のその他の事情と併せて、控訴人が被控訴人による解雇の通告を受け入れ、これに同意したものと認めることもできるというべきである。また、同年四月一日から同年六月三〇日までの給与、賞与等の受領についても同様であり、前記の書簡には、解雇が同年六月三〇日に効力を生ずることを前提として、その場合には、被控訴人は、控訴人に対し、それまでの間、控訴人が出勤しなくても従前どおりの給与、賞与等を支払う旨の記載があるのであるから、控訴人は、解雇を争い被控訴人の右申出を拒絶するのであれば、少なくとも、給与等を受領しても解雇に同意する趣旨ではないとの意思表示をした上で、その受領をすべきであったのであり、何らの留保もせずに、勤務をしないで給与等を受領したときは、これをもって、控訴人が被控訴人の右申出を受け入れたことを推認する一つの事情とみなされても止むを得ないものというべきである。