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ID番号 06812
事件名 従業員地位保全仮処分命令申立事件
いわゆる事件名 ロイヤルタクシー事件
争点
事案概要  タクシー会社が水揚げの少ない乗務員に対し固定車はずしの措置をとったことにつき、固定車以外の車を配車された乗務員がその乗務を拒否し、二日間の乗務停止処分とされ、なお指示に従わず三乗務の出勤停止処分となり、その後も乗務を拒否したことを理由として懲戒解雇され、その効力を争った事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
労働基準法2章
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務命令拒否・違反
裁判年月日 1996年5月28日
裁判所名 大阪地堺支
裁判形式 決定
事件番号 平成7年 (ヨ) 258 
裁判結果 却下
出典 タイムズ919号127頁/労働判例701号49頁/労経速報1599号18頁
審級関係
評釈論文 藤内和公・法律時報69巻9号101~104頁1997年8月
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-業務命令拒否・違反〕
 債務者は、本件固定車はずしの措置を採るに際し、要求する水揚げの水準を明示したわけではないけれども、固定車はずしの対象を選定するに当たって、基本的に毎日の一乗務当たりの水揚げのワースト5に名を連ねる頻度を問題としており、毎日の稼働乗務員数が約九〇名であること、ワースト5の一乗務当たりの水揚げがその平均に比して極めて低い水準にあること、特に債権者の成績が極めて悪いことが認められ、さらに債務者が本件固定車はずしの直前(七月、八月)の水揚げの状況も考慮に入れていることも考え併せると、債務者の要求する水揚げの水準は決して高いものではない。そして、前記二のとおり、固定車はずしによって乗務員は諸々の不利益を受けるけれども、乗務できなくなるわけではなく、その不利益、下車勤務を命じられることによる不利益(一般に収入にも直ちに影響する。)と比較すると、質、量共に小さい程度にとどまるというべきである。そうすると、要求される水揚げの水準の点においても、それによる不利益の質量の点においても、本件固定車はずしが運転の安全性に深刻な影響を与える可能性は、問題視するに当たらない程度であると見るべきである。したがって、これを「乗務の強制」に当たると解することはできないというほかない。〔中略〕
 債務者の固定車はずしの対象の選定基準は、一乗務当たりの水揚げを主な基準とする点で一貫しており、当初具体的な数値の算定等が不十分であったからといって、基準の変遷があったと見ることはできない。そして、特に債権者を選定の対象とした際の基準に変遷は認められない。〔中略〕
 以上のとおり、本件固定車はずしは、適法、正当な措置であり、これを契機として行われた本件乗務停止、出勤停止の各処分に違法な点があると認めるに足りる証拠もないから、債権者が就業規則九二条一号、二九号の懲戒解雇事由に該当することは明らかである。また、前記一4、5等において認定した債権者の勤務成績などに照らすと、債権者は、就業規則九二条二号の懲戒解雇事由にも該当すると認められる。よって、本件懲戒解雇は、正当である。