全 情 報

ID番号 06907
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 オリエントサービス事件
争点
事案概要  フッ素樹脂加工技術者として働いていた者が、退職後ある会社の求人面接を受け、その会社から事業計画書の作成、提出を命じられたことは採用内定あるいは労働契約の予約が成立していたものであり、それにもかかわらず採用を取り消したことは債務不履行であるとして損害賠償の請求を行った事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 労働契約(民事) / 採用内定 / 取消し
労働契約(民事) / 成立
裁判年月日 1997年1月31日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成6年 (ワ) 12244 
裁判結果 棄却
出典 労経速報1639号22頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約-成立〕
〔労働契約-採用内定-取消し〕
 1(一) 原告の本件請求は、原告と被告との間に採用内定がなされ、被告から前記事業計画書の作成、提出を命ぜられたことによって、右採用内定が本採用に至ったというべきであり、仮にそうでないとしても、原告と被告との間には、被告が原告を雇用する旨の労働契約の予約が成立していたことを前提に、被告が原告を採用しなかったことが債務不履行を構成するとして、被告に対し、損害賠償責任を追及するものである。
 しかしながら、前記認定の事実によれば、被告は、一旦はフッ素樹脂加工業への進出を企図したものの、その後右進出を諦めるに至ったのであって、Aは、Bに依頼したフッ素樹脂加工技術者の求人を断念し、Bによる原告の紹介に対しても、これを謝絶したのである。しかし、Bがこの経緯を田村に告げ、このことを耳にしたCがAに原告との面接を勧めたことから、平成六年五月一三日の面接が実現したのであるが、被告は、この面接の際には、フッ素樹脂加工業への進出の意欲も薄れており、また、フッ素樹脂加工業を行うにあたって必要とされる物的施設や資金導入等が具体的に検討された形跡もない。さらに、前記面接においても、原告を事業部長の地位に就けること、社宅を提供すること、週五日制とすることなどの点については被告が原告の希望を容れる方向で話しが進んでいたものの、具体的業務の内容や勤務開始時期の取決めはなかったのである。これらの事情に、通常の雇用契約において最も関心の高い要素の一つである原告の給与については、後に原告がBを通して被告に連絡することとされたに止まり、何ら具体性のある金額が決められなかったことをも考え併せれば、右面接の際に原告の採用が内定されたり、原告と被告との間で、労働契約の予約が成立したなどとすることはできない。
 そして、本件に顕れた諸事情に照らしても、他に原告主張の債務不履行の根拠となるべき契約関係が原告と被告との間に発生するに至った事実を認めることはできない