全 情 報

ID番号 06922
事件名 保険金請求事件
いわゆる事件名 エイ・アイ・ユー・インシュアランスカンパニー事件
争点
事案概要  小型移動式クレーンの操作中の自損事故につき、労働安全衛生法六一条所定のクレーン操作の資格を取得していないとした事例。
参照法条 労働安全衛生法61条
労働安全衛生法72条
労働安全衛生法76条
労働安全衛生法119条
労働安全衛生法120条
体系項目 労働安全衛生法 / 機械・有害物に関する規制 / 機械
裁判年月日 1997年3月13日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成5年 (ワ) 22460 
裁判結果 棄却(確定)
出典 時報1596号110頁/タイムズ935号226頁
審級関係
評釈論文 森本滋/監修、竹濱修・旬刊商事法務1583号100~104頁2001年1月5日/藤田友敬・判例評論465〔判例時報1612〕216~221頁1997年11月1日
判決理由 〔労働安全衛生法-機械・有害物に関する規制-機械〕
 本件各免責条項には、法令に定められた運転資格を持たないで、または酒に酔ってもしくは麻薬・大麻・あへん・覚せい剤・シンナー等の影響により正常な運転ができないおそれのある状態で自動車等を運転しているときの事故については、被告は保険金の支払をしないと規定されている。右各運転行為はいずれも、危険を発生させ、ないしはこれを増加させる蓋然性が極めて大きく、法令により自動車の運転行為が禁止されている行為であり、法令に違反する危険な行為に対しては保険金を支払うことは相当でないとの趣旨から、右のような免責条項が定められたものである。ところで、労働安全衛生法は、事業者は、クレーンを操作する業務については、都道府県労働基準局長の免許を受けた者又は都道府県労働基準局長若しくは都道府県労働基準局長の指定する者が行う技能講習を修了した者その他労働省令で定める資格を有する者でなければ、当該業務につかせてはならず、右資格を有する者でなければ当該業務を行ってはならない旨規定し(六一条一項、同条二項)、右規定に違反した事業者及び右規定に違反してクレーンの業務に従事した者に対して、罰則を課している(同法一一九条一項及び一二〇条一項)が、このような規定を置いたのは、クレーンの操作には、転倒や衝突の危険があり、クレーン作業に従事している者のみならず、周囲の労働者や一般公衆にまで被害が及ぶおそれがあることから、クレーンの操作をする者に対し必要最小限の知識と技能を修得させ、知識と技能を修得した者にのみクレーンの運転業務に従事させることにより、このような災害を未然に防ぐこととしたものと解される。そうだとすれば、本件各免責条項にいう「法令に定められた運転資格」に、労働安全衛生法六一条に基づくクレーンの操作についての資格が含まれると解するのが相当である。
 確かに、本件クレーンのように吊り上げ荷重が一トン以上五トン未満の小型移動式クレーンを操作するためには、小型移動式クレーンの運転についての技能講習を修了しさえすれば足りるものではあるが、たとえ、資格取得のための手続が比較的簡易なものであったとしても、前記の趣旨に照らすならば、小型移動式クレーンの操作に求められる資格が、本件各免責条項にいう「法令に定められた運転資格」に当たらないということはできない。