全 情 報

ID番号 06961
事件名 建物明渡請求事件
いわゆる事件名 JR東日本(杉並寮)事件
争点
事案概要  JR東日本が、単身の従業員のために管理運営している寮について、その利用規程に定める使用制限年齢を超えているとして右寮に入っている従業員に対してその明渡しを求めた事例。
参照法条 借地借家法28条
体系項目 寄宿舎・社宅(民事) / 社宅の使用関係
裁判年月日 1997年6月23日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成7年 (ワ) 23014 
裁判結果 認容(控訴)
出典 労働判例719号25頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔寄宿舎・社宅-社宅の使用関係〕
 証拠(〈証拠略〉、弁論の全趣旨)によれば、原告は、福利厚生施策の一つとして平成七年一〇月一日現在、一〇七棟(定員約八七〇〇名)の独身寮を所有ないし賃借し、従業員に使用させていること、原告は昭和六二年四月に社宅等利用規程を定め、これによって各寮を管理運営していること、原告は寮を使用している従業員から使用料等(使用料、光熱水料金、電話機等設備費)を徴収しているが、その額は各寮の運営経費に比しても格別に低額であり、被告の居住している杉並寮の平成六年度の運営経費についてみるに、寮生一人(定員一一六名であるが、入居率八五パーセントとして算出)につき経常的な経費(光熱水料金、業務委託費、維持・管理費、NTT基本料金、寮長人件費)として月額約三万五〇〇〇円がかかったが、そのうち寮生の負担は八四六〇円のみで、原告が残りの約二万六八〇〇円を負担していること、ちなみに、右経費に地代、建物及び設備の年間償却額を加えた経費は寮生一人あたり六万四〇六四円になること、杉並寮近辺の貸室の賃貸料は月額約五万円を超えることが認められ、右認定事実に照らすと、原告が管理運営する寮の利用関係は、従業員に対する福利厚生施策の一環として、社宅等利用規程によって規律される特殊な契約関係であって、借地借家法の適用はないというべきである。
 被告は、社宅使用と労務の提供は対価関係にあり、社宅の現物給付性と使用料等が合わせて賃料としての対価性を有し、本件寮室の使用関係は賃貸借であり、借家法の適用を免れないと主張する。しかし、右認定事実によれば、入寮者が原告に支払っている使用料等は寮の運営経費の三分の一にも満たないものであって、到底寮室使用の対価とは認められないうえ、原告と被告との間の労働契約おいて労務の提供の対価として本件寮室の使用をさせる旨の合意がなされている等の本件寮室の使用と労務の提供が対価関係にあると認めるに足りる証拠はなく、被告の右主張は採用できない。