全 情 報

ID番号 06972
事件名 遺族補償給付及び葬祭料不支給決定処分取消請求事件
いわゆる事件名 北九州東労働基準監督署長(オカジ株式会社)事件
争点
事案概要  高血圧症を基礎疾病として有していた労働者が、業務であるダンボールの運送作業後に死亡したことにつき、業務過重性がないことなどを理由に業務起因性がないとし、労基署長の処分を相当とした事例。
参照法条 労働者災害補償保険法7条1項
労働基準法施行規則35条
労働基準法施行規則別表第1の2
体系項目 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 業務起因性
労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 脳・心疾患等
裁判年月日 1997年7月30日
裁判所名 福岡地
裁判形式 判決
事件番号 平成6年 (行ウ) 18 
裁判結果 棄却(確定)
出典 労働判例725号67頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-業務起因性〕
〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-脳・心疾患等〕
 六 一郎の発症と業務起因性
 一郎の発症当日の業務は下関市内の配送であり、A会社ではダンボール二〇六枚、すなわち二〇枚を一束とした場合の約一〇束分を二階倉庫に運び込んだ直後に発症したというのである。
 A会社における作業は、一度に二束を運んだとしても五往復を要し、この場合一束の重さが約一五キログラムとして約三〇キログラムの荷物をもって階段を昇降することになるから(〈人証略〉)、右作業が一郎の血圧を一時的に上昇させたと考えられるが、前記のとおりBは以前から明らかな高血圧症の基礎疾病を有していたにもかかわらず、これに対する十分な治療を継続的に行っておらず、高血圧症による脳血管壊死が進行していた可能性が高いと認められること(〈証拠略〉)、右高血圧症の治療が不十分であったことについては、前記のとおり、Bが医師の処方する降圧剤の服用に消極的であったことがその主たる原因と考えられ、本件会社の業務がBをして適切な治療を受けさせなかったと認めるに足りる証拠は存在しないこと、及び、Bの業務が全体として特に過重なものではなく、A会社における右作業も右一郎の業務の中で特に異常な負荷を加えるものとまでは認められないことを総合して考慮すれば、橋出血を原因とするBの死亡を、同人の業務に内在する危険が現実化したものと評価することはできず、Bの業務と死亡の間の相当因果関係すなわち業務起因性もこれを認めることはできない。