全 情 報

ID番号 06976
事件名 解雇無効確認請求事件
いわゆる事件名 平山運送事件
争点
事案概要  勤務成績・勤務態度不良を理由に諭旨解雇された労働者が退職願いを提出しなかったため懲戒解雇された事例につき、右懲戒解雇を有効とした事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務懈怠・欠勤
裁判年月日 1997年8月29日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成8年 (ワ) 5899 
裁判結果 認容,一部棄却
出典 労経速報1650号27頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務懈怠・欠勤〕
 一 解雇事由について
 1 無断欠勤について
 証拠(略)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
 (一) 被告の就業規則二二条(欠勤手続)は、「従業員が傷病、その他やむを得ない事由により欠勤しようとするときは、あらかじめ所属長にその期日と事由とを明記する届出書により届出て許可を受けなければならない。但し、やむを得ない事由により事前の書面による届出ができないときは、電話等の方法で事前に連絡するよう努め、事後速やかに所定の届出書により届出なければならない。
 前項の手続を怠ったときは無断欠勤として取り扱う」と定めている。
 (二) 被告においては、始業は午前七時三〇分、終業が午後四時三〇分で、終業時間までに乗務員から翌日の欠勤届が出ない場合には、翌日の配車が割り当てられ、運行配車指示表(配車掲示板)に、車号、乗務員名、積み込み場所、配送場所(早出・納品時間指定等)が記載され、乗務員はこれを確認して退社することとなっていた。
 (三) 被告における無断欠勤の意味については、そもそも被告の原告以外の一九名の乗務員は有給休暇を使用する以外に欠勤することがほとんどないことから、被告内においてその意味について曖昧な部分があるが、原告は、一年間に有給一四・五日、欠勤三五・五日の合計五〇日休みを取得しており、前日の終業時間までに欠勤届を出さずに、欠勤することが、平成七年四月一日から平成八年三月三一日までに二八日あり、そのうち、約八日、欠勤当日の始業時間午前七時三〇分を過ぎても欠勤の連絡をしなかったことがあって、原告の休みの取り方は異常であった。
 (四) 右のように原告が配車の割当を受けた後急に欠勤すると、被告は、他の従業員を代役に立てざるを得ず、配車係が代役を務めたことが七、八回、専務が代役を務めたことが、二、三回あり、被告の業務の支障になった。
 (五) 被告が、原告に対し、欠勤する場合には事前に連絡するよう注意すると、原告は、寝ているから電話できない旨の答弁をして態度を改めようとはしなかった。
 右のとおり認めることができる。
 なお、原告は、欠勤する場合事前に電話連絡をしており、これまで問題とされることはなかった旨主張し、(書証略)、原告本人は、これに沿うが、(人証略)に照らして、信用することができず、原告の右主張は採用できない。
 右認定事実によれば、被告における無断欠勤の意味については、被告内においてその意味について曖昧な部分があるが、被告の就業規則及び配車体制においては、前日の終業時間までに欠勤届を出さずに欠勤するのが許されるのはやむを得ない事由のある場合に限られると考えられるところ、原告には欠勤が異常に多く、前日の終業時間までに欠勤届を出さずに欠勤することが、一年間に二八日あり、そのうち、約八日は当日の就業時間までに連絡せず明らかに無断欠勤であるというのであるから、就業規則四七条三号ないし五号に該当するといわざるを得ない。
 2 遅刻及び始業時の朝礼点呼を受けないことについて
 証拠(略)及び弁論の全趣旨によれば、原告には、一年間に遅刻が三六日、朝礼点呼を受けないことが六六日あったことを認めることができ、これは、就業規則四七条四号ないし六号に該当するということができる。
 これに対し、原告は、遅刻は、阪神大震災の影響であり、その都度被告に連絡をして了解を得ていたこと、また、被告は、原告が始発のバスを利用しても定時にしか出勤できない事情を知りながら早出出勤を強要してきたことがあること、始業時の朝礼点呼には、原告は、午前七時二八分に被告に到着し、二階のロッカールームで着替えをし、直ちに点呼に加わっており、これまで被告から何ら問題とされなかったことを主張し、(書証略)、原告本人はこれに沿う。しかし、(書証略)、原告本人は、阪神大震災の影響が一年以上継続したとは考えられないこと、(証拠略)に照らして、にわかに信用することができず、原告の右主張は採用できない。
 3 連絡先、電話番号の届出拒否について
 (証拠略)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、被告が要求しても連絡先、電話番号を知らせなかったため、原告に連絡が付かず、前記無断欠勤とあいまって業務に支障をきたしたことを認めることができ、これは、就業規則四七条五号及び六号に該当するということができる。
 4 長距離運行の乗務拒否について
 (証拠略)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、体調が悪いと言っては長距離運行を拒否し続け、被告が平成七年一二月一八日に診断書の提出を勧告したにもかかわらず、原告はこれを提出しなかったことを認めることができ、これは、就業規則四七条四号ないし六号に該当するということができる。
 これに対して、原告は、長距離運行をしていなかったのは、体調が悪かったためであり、診断書の提出を要求されたのは平成八年三月二八日になってからであり、原告が四月初めに提出する旨返答すると、被告配車係は納得していた旨主張するが、これに沿う(書証略)、原告本人は、(証拠略)に照らして、にわかに信用することができず、原告の右主張は採用することができない。
 5 注意勧告に対する不服従について
 (証拠略)及び弁論の全趣旨によれば、被告は、原告に対し、勤務態度についてたびたび注意勧告をしたが、原告は、全く反省する態度を示さず、かえって注意をする上司に反抗的態度をとったことを認めることができ、これは、就業規則四七条六号に該当するということができる。
 6 以上によれば、原告の勤務状況及び態度は、諭旨解雇事由に該当するといわざるを得ないものと認められる。〔中略〕
 三 したがって、原告の勤務状況及び態度は、就業規則四七条三号ないし六号に規定された諭旨解雇事由に該当し、その程度に鑑みれば、原告が退職勧告に応じないことから制裁(懲戒)解雇もやむを得ないものと認められる。