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ID番号 07008
事件名 賃金等請求事件
いわゆる事件名 医療法人南労会事件
争点
事案概要  医療法人である被告との間で労働契約を締結して、被告の設置する診療所で稼働していた者が、その所属する労働組合との間で労働協約が成立したとして、賃上げ差額分、年末一時金等を請求し、予備的に労働契約上の債務不履行に基づく損害賠償を請求した事例(請求棄却)。
参照法条 労働組合法14条
労働基準法3章
体系項目 賃金(民事) / 賃金・退職年金と争訟
裁判年月日 1997年5月26日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成7年 (ワ) 9253 
平成8年 (ワ) 1942 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 労働判例720号74頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔賃金-賃金・退職年金と争訟〕
 労組法一四条が労働協約につき書面化を要求する趣旨が労使間の合意を明確化し、後日の紛争を防止することに尽きるとすれば、労使間の妥結内容が当事者間で明確化されている限り、一通の書面によらなければならない必然性はない。しかし、書面性の趣旨は、右に尽きるものではなく、ほかにも、例えば、労使間の将来を律する重要な行為をなす場面であること(労働協約には規範的効力があるほか、組合員以外の第三者に対しても一般的拘束力が及ぶ場合がある。)を両当事者に自覚させ、慎重な判断の下に協約が締結されることを手続面から担保しようとした点も挙げることができるのであって、右の点にかんがみれば、原告ら主張の往復文書による協約締結は、労組法一四条の予定しないものというべきであり、結局、原告らの右主張は採用することができない。
 また、原告らは、昭和六〇年の賃上げ以来、平成三年夏季一時金妥結までの間に、少なくとも一一回にわたり協定書なしに支部・被告間の合意内容どおりの賃上げ等が実施されてきたとし、右は書面なくして有効な協約が成立するとの労使慣行が支部・被告間に存在していた証左である旨主張する。
 しかし、右慣行の存在自体、これを認めるに足りる証拠が存在しないばかりでなく、仮に右慣行が存在したとしても、前記書面性の趣旨の重要性にかんがみるとき、労組法一四条は、労使間の慣行によっても排除することができない強行規定と解するのが相当であるので、右と見解を異にする原告らの主張は失当であって採用することができない。