全 情 報

ID番号 07039
事件名 退職金請求事件
いわゆる事件名 ホーヤ事件
争点
事案概要  早期退職優遇制度による退職金の増額支払の請求につき、本件制度は四五歳以上の者に適用されるもので、原告は四五歳未満であり、右制度がそのまま適用されるものではないとされた事例。
参照法条 民法414条
労働基準法24条1項
労働基準法89条1項3の2号
体系項目 賃金(民事) / 退職金 / 早期退職優遇制度
裁判年月日 1997年10月31日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成8年 (ワ) 2683 
裁判結果 棄却
出典 労経速報1674号26頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔賃金-退職金-早期退職優遇制度〕
 1 まず、前記認定によれば、キャリア選択制度は、四五歳以上の従業員が退職するに際し、優遇措置を講ずる内容の制度であり、四五歳以上の従業員に関しては、その制度は、基準さえ満たせば一律に適用されるものであったが、四五歳未満の従業員に関するキャリア選択制度の適用は、一律に適用されるものではなく、退職を希望する従業員との間で、個別に退職条件が定められるものであったことが認められる。
 この点、原告は、四五歳未満の者にもキャリア選択制度が一律に適用されることとなっていた旨主張し、Aが平成六年末頃、大阪店の従業員を集めて、四五歳未満の者に対してもキャリア選択制度の適用がある旨説明したと主張する。そして、原告本人がこれに沿う供述をする他、(書証略)にも同様の記述がある。しかしながら、(人証略)がいずれもこれを否定していること、原告本人の供述及び(書証略)のいずれも説明会の開催された日時を特定しておらず、開催の具体的状況も曖昧であることに照らし、右各証拠はにわかに信用できない。かえって、前記のとおり、平成七年八月二四日の三役折衝において、被告は、四五歳未満の退職希望者に対し選択定年加算金を支給することを拒絶していること、平成七年九月四日、BがAに対し、原告の退職条件について確認したところ、Aは、会社都合による退職になり一年分の年収加算はあるが、それ以外の加算金は出ない旨答えていること、(書証略)によれば、平成六年七月から平成八年三月にかけて四五歳未満で退職した者七名のうち、キャリア選択制度と同様の加算金を支給されている者は一名(平成六年七月付けの退職者)に過ぎず、原告を除く他の五名は、年収加算金の他には加算金を全く支払われていないことが認められることからすれば、四五歳未満の退職者に対しては、一律にキャリア選択制度が適用されてはいなかったことが認められるから、原告の主張は理由がない。
 2(一) 前記のとおり、四五歳未満の従業員については、キャリア選択制度を一律に適用するとの取扱いであったとは認められないのであるから、原告が被告に対し七〇〇万円の選択定年加算金を請求することができるためには、原告と被告との間で、原告が退職するに際しそのような選択定年加算金を支給するとの個別の合意が存在することを要するというべきである。
 そこで、原告と被告との間にそのような合意が成立していたかどうかを検討すると、前記認定の事実関係に照らせば、そのような合意が成立していたとは認められない。