全 情 報

ID番号 07052
事件名 解約金請求事件
いわゆる事件名 ホクトエンジニアリング事件
争点
事案概要  自動車の運転及び修理等に習熟した多数の従業員を抱えて各種の役務を顧客に提供するサービス業を営んでいるA会社が、自ら配置した従業員を自己の従業員として採用しようとしたBとの間で、「Aが配置した車両運行管理者をBの従業員として採用する目的で右〔役務提供の〕契約の更新拒絶をした場合には解約金を支払う」旨の条項に基づき、解約金の支払を求めた事例(請求棄却)。
参照法条 労働者派遣事業の適正運営確保及び派遣労働者の就業条件整備法4条3項
労働者派遣事業の適正運営確保及び派遣労働者の就業条件整備法33条2項
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 派遣
労働契約(民事) / 成立
裁判年月日 1997年11月26日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成7年 (ワ) 23207 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 時報1646号106頁/タイムズ987号275頁
審級関係
評釈論文 山口浩一郎・判例評論481〔判例時報1661〕200~203頁1999年3月1日
判決理由 〔配転・出向・転籍・派遣-派遣〕
〔労働契約-成立〕
 労働者派遣法は、労働力の需給の適正な調整を図るため労働者派遣事業の適正な運営の確保に関する措置を講ずるとともに、派遣労働者の就業に関する条件の整備等を図り、もって派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進に資することを目的とする(同法一条参照)。そして、労働者派遣法四条三項は、右の目的を達成するため、同条一項にいう適用対象業務以外の業務について労働者派遣事業を行うことを禁止し、その違反に対しては、一年以下の懲役又は二〇万円以下の罰金という刑事罰を課するものとしている(同法五九条一号参照)。
 しかしながら、労働者派遣法四条三項の規定は、労働力需給調整システムとして需給の迅速かつ的確な結合を図るためには、労働大臣の許可等の要件の下で労働者派遣事業という方法により行わせる必要のあるものに限って右事業を行わせることが適当であること、及び、雇用慣行との調和を考慮すれば雇用慣行に悪影響を及ぼすことの少ない業務分野に限って労働者派遣事業を許すことが適当であることなどにかんがみて、労働者派遣法四条一項にいう適用対象業務以外の業務について労働者派遣事業を行うことを禁止し、もって労働者派遣事業の適正な運営の確保と派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進を図るという政策的若しくは公益的見地から行政上設けられた取締規定にすぎず、その違反行為の民事上の効力まで否定する趣旨の効力規定ではないものと解される。
 したがって、本件契約に基づいて原告の行っていた労働者派遣事業が、労働者派遣法四条三項の規定に違反していたとしても、これをもって直ちに本件契約が右規定に違反して無効となるものということはできない。〔中略〕
 右の各規定は、派遣元事業主と派遣労働者及び派遣元事業主と派遣先との間で、正当な理由がなく、派遣労働者が派遣元事業主との雇用関係の終了後、派遣先であった者に雇用されることを制限する旨の契約を締結することが許されることになると、憲法二二条により保障されている派遣労働者の職業選択の自由を実質的に制限し、派遣労働者の就業の機会を制限する結果となって、前記の労働者派遣法の立法目的が達成されなくなることから、派遣元事業主と派遣労働者の間のみならず、派遣元事業主と派遣先との間においても、右のような契約を締結することを禁止し、もって派遣労働者の職業選択の自由を特に雇用制限の禁止という面から具体的に保障しようとする趣旨に基づいて設けられた規定であると解される。したがって、労働者派遣法三三条に違反して締結された契約条項は、私法上の効力が否定され、無効なものと解される。
 (三) また、前記の労働者派遣法の立法目的及び右のような同法三三条の規定の趣旨などに照らせば、形式的には、同条に違反してはいない契約条項であっても、派遣元事業主が、派遣先との間で、正当な理由がなく、派遣先が派遣労働者を派遣元事業主との雇用関係の終了後雇用することを禁ずる結果となる契約条項を締結することも、実質的に、同条に違反するものというべきであるから、そのような契約条項も、私法上の効力が否定され、無効なものと解するのが相当である。〔中略〕
 本件契約中の本件解約条項は、憲法二二条により保障されている派遣労働者の職業選択の自由を実質的に制限し、派遣労働者の就業の機会を制限する結果を生じさせ、前記の労働者派遣法の立法目的の達成を著しく阻害するものというべきである。すなわち、本件解約条項は、実質的に、派遣元事業主が、派遣先との間で、正当な理由がなく、派遣先が派遣労働者を派遣元事業主との雇用関係の終了後雇用することを禁ずる結果となる契約条項であって、原告が行っていた前記の労働者派遣事業につき、右のような結果をもたらす契約条項の締結を禁止して派遣労働者の職業選択の自由を保障しようとする趣旨に基づく労働者派遣法三三条二項の適用若しくは類推適用を回避することを目的として設けられた約定といわざるを得ないから、同条項に実質的に違反するものというべきである。