全 情 報

ID番号 07085
事件名 賃金等請求事件
いわゆる事件名 JR東海事件
争点
事案概要  新幹線「のぞみ」の運転手が時速二七〇キロメートルで走行すべきところを二三〇キロメートルで走行する旨の減速闘争に参加することを予告してした就労の申入れは債務の本旨に従った労務の提供とはいえないとして会社が、その受領を拒否し、当該乗務にかかる賃金をカットしたのに対して、当該カットを不当としてカット分の賃金を請求した事例(請求棄却)。
参照法条 労働組合法7条
労働基準法2章
労働基準法3章
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 債務の本旨に従った労務の提供
賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 債務の本旨にしたがった労務の提供
裁判年月日 1998年2月26日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成5年 (ワ) 14000 
平成6年 (ワ) 370 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 タイムズ979号154頁/労働判例737号51頁
審級関係
評釈論文 石井保雄・平成10年度重要判例解説〔ジュリスト臨時増刊1157〕223~225頁1999年6月/大内伸哉・ジュリスト1164号154~156頁1999年10月1日/浜村彰・法律時報71巻7号127~130頁1999年6月
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-債務の本旨に従った労務の提供〕
 労働者の就労の申入れが債務の本旨に従った労務の提供といえない場合、使用者は、雇用契約に基づく労務給付請求権の債権者として、その受領を拒否し、その労務にかかる賃金の支払を拒否し得ると解すべきであり、必ずしもロックアウトによらなければ就労を拒否することはできないとはいえない。また、雇用契約において、労働者の就労の申入れが債務の本旨に従った労務の提供といえない以上、使用者がその受領を拒否できるのは当然であって、受領を拒否するためにはさらに正当な事由の存する必要があるとする原告らの主張は採用できない。もっとも、賃金が労働者にとって最も重要な労働条件の一つであることを考慮すれば、労働者の就労の申入れが債務の本旨に従った労務の提供といえるかどうかは、労務の瑕疵の内容、程度、それが職務の遂行に及ぼす影響の程度等に照らし、提供された労務が賃金の支払を拒否するに足りる程度に不十分であるといえるかどうかによって判断すべきものと解される。〔中略〕
 本件減速走行は、前記の運転士の義務、すなわち、各停車場の発着時刻どおりに各停車場を出発、通過又は到着するよう運転し、かつ、運転時の諸状況に適合した安全・快適かつ経済的な運転を行う義務に違反するものというべきである。〔中略〕
〔賃金-賃金請求権の発生-債務の本旨にしたがった労務の提供〕
 本件減速走行を予告しての就労の申入れをもって、雇用契約上の債務の本旨に従った労務の提供であると解することはできず、被告がその受領を拒否し、その労務にかかる賃金の支払を拒否したことは、正当なものというべきである。
 そして、この結論は、本件減速闘争が正当な争議行為といえない場合はもとより、仮に正当な争議行為であるとしても、雇用契約における債権債務関係及びノーワーク・ノーペイの原則に照らして、異なるところはない。