全 情 報

ID番号 07123
事件名 地位保全仮処分命令申立事件
いわゆる事件名 ソニーマーケティング事件
争点
事案概要  特約店担当ルートセールスから商品情報センターへの配転命令につき、本件においては職種を限定する特約は存在せず、人事権の濫用にも当たらないとして、地位保全の仮処分申請が棄却された事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令の根拠
配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の濫用
裁判年月日 1998年4月27日
裁判所名 大阪地
裁判形式 決定
事件番号 平成10年 (ヨ) 838 
裁判結果 却下
出典 労経速報1676号8頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令の根拠〕
〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令権の濫用〕
 二 前記の事実に基づき検討するに、本件求人広告には「営業社員 A会社特約店担当」との記載があったが、応募者資格として、学歴(高卒以上)、年齢(二五歳まで)を除いて職務経験の有無を問うてはいなかったし(なお、募集広告は、契約申込の誘引にすぎないもので、その内容がそのまま労働契約の内容になるものではない)、債権者が入社前に交付を受けていた債務者の就業規則の規定(三五条)および債権者の入社後の債務者内での異動状況等も併せて考慮すると、債権者と債務者との間の労働契約には債権者の主張するようなルートセールスに職種を限定するとの特約はなかったものと認められる。
 また、前記事実関係に照らせば、本件配転命令は、債務者の業務体制の見直しに伴う必要かつ相当なもので、人選も債権者の職歴と能力を考慮したもので合理的理由があると認められる。本件配転命令が恣意的であって必要性、合理性がないとか、企業内における権限を私的制裁に利用したものであって人事権の濫用であるとの債権者主張事実を認めさせる疎明はない。
 次に、債権者は、「本件センターでの給与は、セールス手当の無いものであり、これは、一方的な労働条件の改悪であって違法である」旨の主張をするが、セールス手当は超過勤務手当が支給されないことの代償として支給されるものであるところ、本件センターにおいてはセールス手当の支給はないものの超過勤務手当が支給されるのであるから、本件異動により債権者が不当に不利益になるとはいえない。
 その他、本件異動によって債権者が従前と比べて著しく不利益になるとのことを認めさせる疎明はない。
 三 以上によれば、債権者の本件申立ては、被保全権利の疎明がないからこれを却下すべきである。