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ID番号 07128
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 サンデン交通事件
争点
事案概要  組合員であるバス運転手に対し新車を割り当てないことは不当労働行為に当たり、不法行為を構成するとされた事例。
参照法条 民法709条
民法710条
労働組合法7条1号
労働組合法7条3号
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 企業秘密保持
裁判年月日 1998年5月11日
裁判所名 山口地下関支
裁判形式 判決
事件番号 平成6年 (ワ) 131 
裁判結果 一部認容、一部棄却(控訴)
出典 労働判例746号43頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-企業秘密保持〕
 四 被告の責任
 ところで、複数組合併存下にあっては、すべての場面で使用者は各組合に対し、中立的態度を保持し、その団結権を平等に承認、尊重すべきものであり、各組合の性格、傾向や従来の運動路線のいかんによって差別的な取扱いをすることは許されない(最判昭和六〇年四月二三日民集三九巻三号七三〇頁参照)。そして、この理は、当該各組合に所属する組合員に対しても同様に当てはまる。
 しかるに、被告は、前記のとおり、昭和三八年初めから、わずか四台を除き、新車をすべてA労働組合所属の運転手だけに配車して原告運転手らを原告組合員であることの故に差別し、原告組合及び原告運転手らをA労働組合及びその組合員に比較して不利益に取り扱ったものであるから、これが労働組合法七条一号、三号に違背し、かつ、一般私法上も違法な行為であることは明らかである。そして、右配車差別により、原告運転手らは、その団結権を侵害されるとともに、A労働組合所属の運転手のうちの同程度の経歴を有する運転手と対等な立場で新車の配車を受けるべき期待権を侵害された上、同原告らが運転手としての技能、経歴が劣っている者であるとして世間に公表されたと同様の処遇を受けて人格権の侵害を受けたことが認められる。また、原告組合も、右の配車差別により組合としての組織の維持、発展が阻害され、憲法その他の法律によって保障されている固有の団結権の侵害を受けたことが認められる。
 したがって、被告による右配車差別は、原告らに対する不法行為を構成するから、被告は、これによって原告らが被った後記損害を賠償する義務がある。