全 情 報

ID番号 07144
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 関西外国語大学事件
争点
事案概要  兼職を理由とする大学教員に対する解雇につき、解雇権の濫用にも当たらず有効とされた事例。
参照法条 民法1条3項
労働基準法2章
労働基準法89条1項3号
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 二重就職・兼業・アルバイト
解雇(民事) / 解雇権の濫用
裁判年月日 1998年6月15日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成8年 (ワ) 4593 
裁判結果 棄却
出典 労経速報1681号10頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-二重就職・兼業〕
〔解雇-解雇権の濫用〕
 2 本件解雇の解雇理由の存在について
 前記認定のとおり、原告は、本件契約を締結した後もA大学の準教授としての地位を有し、特に平成七年(一九九五年)一月から三月までの間は、同大学において正規の授業を担当し、報酬も受け取っていたのであって、これが、本件契約において禁止された兼職に該当することは明らかであるから、原告には、本件解除条項に定める解除事由(解雇理由)が存在するというべきである。
 確かに、当初契約にも兼職禁止条項が存在するにも関わらず、被告は、原告がA大学に在籍していることを問題としていなかったことが認められるけれども、当初契約と本件契約とでは、原告の地位に質的な違いがあることは前記のとおりであるから、右事実は、本件契約において兼職が解雇理由になることを妨げるものではない。〔中略〕
 (二) 原告は、また、原告の兼職は、短期間のもので、背信性は高くなく、被告にも損害が生じていないにもかかわらず、被告が本件解雇に及んだと主張するので検討する。
 本件契約が、原則として定年まで継続することの予定された期間の定めのない雇用契約であったことを考慮すると、その待遇に見合った職務専念義務を確保するため、兼職を禁止し、これに違反したことを解雇理由とすることには、十分な合理性があるものと考えられる。そして、前記認定のとおり、原告は、A大学に籍を有していたのみならず、現実に一学期間授業を担当していたのであって、その間は被告大学における講義を休講にするなど、被告大学における就労に実際に支障が出たものといわざるを得ないこと、原告は、平成七年の冬学期にA大学の正規の授業を担当して報酬を得ることを被告に秘しながら、兼職に及んでいたことを考慮すると、原告が兼職に及んだ意図がどこにあったかはともかくとして、その背信性が低いとは決していえない。
 (三) 以上によれば、原告が解雇権の濫用として主張する事情は、いずれも認め難いので、被告が、本件解雇前に原告の弁明を聴かなかったとしても、本件解雇が解雇権の濫用に当たるとはいえない。この点の原告の主張は、理由がない。