全 情 報

ID番号 07145
事件名 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 延岡学園事件
争点
事案概要  教職員組合の委員長による、生徒に対する組合文書の配布指導等を理由とする懲戒解雇につき、学校の利益を不当に侵害し、その名誉・信用を毀損あるいは失墜させるものであるとし、右懲戒解雇が不当労働行為に当たるものではなく有効とされた事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
労働組合法7条1号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 信用失墜
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 違法争議行為・組合活動
裁判年月日 1998年6月17日
裁判所名 宮崎地延岡支
裁判形式 判決
事件番号 平成5年 (ワ) 192 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 労働判例752号60頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-信用失墜〕
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-違法争議行為・組合活動〕
 被告が、本件解雇当時、本件組合に対し、右1のとおり嫌悪感を抱いていたとしても、前記一の判断のとおり、本件解雇は懲戒事由を具備しているのであるから、本件解雇が不当労働行為に該当するかどうかは、本件組合の結成当時からの活動経過や本件リボン着用、生徒配布文書の配布、本件申入書の県当局への提出及び父兄等配布文書の配布自体の違法性を総合した上で、仮に原告が本件組合員でなかったとしても被告が懲戒処分として最も重い懲戒解雇を選択したといえるかどうかによって決するのが相当である。
 まず、本件組合の結成当時からの活動経過を検討する。前記第二の二1ないし4、同三1ないし4、同四1、2、5ないし7、五2ないし6で認定した事実によれば、〔1〕昭和五五年までは、ステッカー貼付やストライキといった激しい争議行為が行われていたこと、〔2〕五五年協定の締結後は〔1〕のような争議行為は行われていないが、設備等の教育条件の充実を含めた要求書を被告に提出してきていたこと、〔3〕昭和六〇年代の活動の中心的課題は、賃金問題(当初は他の私立学校と学園の間の賃金格差是正であったが、六二年諸規定制定後は学園内での本件組合員とそうでない者との間の賃金格差是正となった。)であったこと、〔4〕常勤講師雇止め撤回問題は、昭和六三年三月までは発生していなかったことを認めることができる。このような活動経過からは、本件組合が、公教育を担う教職員を構成員とするという特色を要求書の提出という行動に反映させながらも、労働組合本来の目的である労働条件(=賃金)の向上を中心的課題としてきたという特徴を認めることができる。このような本件組合の活動の特徴からすると、本件リボン着用、生徒配布文書の配布、本件申入書の県当局への提出及び父兄等配布文書の配布は、常勤講師雇止め撤回という主たる目的、態様及び被告の業務阻害の危険性の程度のいずれの観点からしても、それまでの争議行為とは質的に異なっている。
 次に、前記第三の一1(四)及び2(四)の判断によれば、本件リボン着用、生徒配布文書の配布、本件申入書の県当局への提出及び父兄等配布文書の配布を併せた違法性は高いといわざるを得ない。特に本件申入書の記載内容の中には、重大な過失に基づいて被告の名誉・信用を失墜させる危険があり、刑事告発がなされてもおかしくないものがある。
 右のような事情を総合すれば、仮に原告が本件組合員でなかったとしても、本件リボン着用、生徒配布文書の配布、本件申入書の県当局への提出及び父兄等配布文書の配布を行っていれば、被告において懲戒解雇を選択したといえる。したがって、本件解雇は不当労働行為に該当するとはいえない。