全 情 報

ID番号 07249
事件名 給料等請求事件
いわゆる事件名 ティ・エス・ティ事件
争点
事案概要  退職した者に対する給与の未払分の請求が一部認容された事例。
参照法条 労働基準法24条
体系項目 賃金(民事) / 賃金の支払い原則 / 全額払・相殺
裁判年月日 1998年12月11日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成9年 (ワ) 19857 
裁判結果 一部認容、一部却下
出典 労経速報1695号15頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔賃金-賃金の支払い原則-全額払〕
 二 未払給与支払請求について
 1 請求原因5項から7項までの事実(原告らの各雇用契約)及び抗弁4の事実(本件各減額の合意)は当事者間に争いがない。
 2 再抗弁1の事実について判断する。
 (証拠略)並びに原告X1及び原告X2各本人尋問の結果並びに被告代表者の尋問の結果(書証略の記載及び被告代表者の供述中後記採用しない部分を除く)によれば、被告代表者が、平成九年一月の職員全体会議で、給与を手取り二〇万円にする提案を口頭でし、職員の希望退職を募る話をしたこと、同月末日ころ、原告X1及び原告X2が、被告代表者と被告の再建策を話し合い、被告代表者から半年間の給与の減額を求められ、やむなくこれを了承したこと、しかし、原告X2が、給与の減額が六箇月間に限られるのか不安を感じ、同日午後一一時ころ、被告の(略)の事務局を訪れ、被告代表者に対し、給与の減額が六箇月間に限られることの確認を求め、被告代表者がこれを肯定したこと、そこで、原告X2が原告X1及び原告X3に電話でその旨を連絡したこと、平成九年二月一四日、被告代表者は、教室長会議において同日付け「A」と題する文書(書証略)を配布し、給与を手取り二〇万円にする提案を正式にしたこと、右文書には、給与減額の提案についての補足として、ベースの二〇万円は変更せず、例外も設けない、六月末までの生徒数の増減を前年比で教室ごとに集計し、増加数に応じて「報償」金を支給する、支給は教室単位で行い、その配分は教室長の権限事項とする、業界関連の他社業務の下請作業に参加した場合は別途手当を支給する等の記載があったこと、各原告と被告とは、平成九年二月一九日、本件各減額の合意をしたこと、以上の事実が認められ、(書証略)及び被告代表者の供述中右認定に反する部分は前掲各証拠に照らしてたやすく採用することができず、他に右認定に反する証拠はない。
 右認定事実に基づいて考えると、各原告と被告とは、平成九年一月末日ころ、六箇月間に限って給与の減額を行うことを合意し、この合意を前提に本件各減額の合意をしたものと解するのが相当である。
 よって、原告らの再抗弁1は理由がある。
 3 原告X1、原告X3及び原告X2は、それぞれ口頭弁論終結以後の平成一〇年一〇月以降毎月二五日限り三七万円、四〇万円及び三五万円の月額給与全額の支払を請求しているが、本件訴え中これらの請求に関する部分は将来の給付を求める訴えに当たるから、あらかじめその請求をする必要がある場合に限り提起することができる(民事訴訟法一三五条)。
 右各請求中各原告の請求する各二七万円については、被告は、各原告に対して月額二七万円の支払義務のあることは認めており、被告代表者の尋問の結果によれば、口頭弁論終結に至るまでその支払を遅滞していないことが認められ、本件各証拠によっても被告が毎月二五日に月額二七万円を支払わない意思であることを認めることができないから、あらかじめその請求をする必要があるということはできないが、各原告の各月額給与と二七万円との差額については、あらかじめその請求をする必要があるものというべきである。
 よって、本件訴え中各原告が平成一〇年一〇月以降毎月二五日限り各二七万円の支払を請求する部分は、不適法であるから、却下する。