全 情 報

ID番号 07276
事件名 賃金等請求事件
いわゆる事件名 高島屋工作所事件
争点
事案概要  「技量又は能率が著しく低劣であって職務に適せず配置転換も不可能で就業の見込みがないと認めたとき」ならびに「やむを得ない会社の業務上の都合」を理由とする解雇につき、右解雇は合理的なもので、著しく社会的相当性を欠く解雇権の濫用には当たらず有効とされた事例。
参照法条 労働基準法2章
民法1条3項
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 職務能力・技量
解雇(民事) / 解雇事由 / 企業解散・事業の一部廃止・会社制度の変更
解雇(民事) / 解雇権の濫用
裁判年月日 1999年1月29日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成8年 (ワ) 172 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 労働判例765号68頁/労経速報1720号3頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-職務能力・技量〕
〔解雇-解雇事由-企業解散・事業の一部廃止・会社制度の変更〕
〔解雇-解雇権の濫用〕
 原告は、その遅刻等の回数が他の従業員に比して非常に多く、その理由も真にやむを得ないものであったのか疑わしいうえ、右に述べたような上司等に対する対応及び(証拠略)(仮処分事件の審尋における原告の供述)に照らせば、原告は、遅刻や私用外出が多いことについて、他の従業員等に迷惑をかけ申し訳ないとの意識が全くないばかりか、賃金カットさえ受ければ遅刻や私用外出は従業員の自由ないしは権利であるとさえ考えていたことが窺われるのであり、原告には、誠実に業務を遂行しようとする意欲が著しく欠けていたというほかはない。〔中略〕
 また、右認定にかかる原告の上司に対する対応を見ると、原告は、上司の当然の指示であっても、独自の理論を振りかざし、合理的理由もなくこれを無視し、あまつさえ上司を誹謗するような文書を本社に送付するなどしているのであって、原告には、上司の指揮命令に従って誠実に業務を遂行しようとする態度が全く欠けていることが認められる。〔中略〕
 原告は、上司の業務命令であっても自らの考えに照らし不合理なものであれば従う必要はなく、その場合には上司を大声で罵倒しても良いと考えており、現実にもそのように振る舞い、また、意見が合わない同僚とは大声で怒鳴りあうことにより理解が深まるとの特異な考えに基づき、同僚と意見が異なった場合には相手を大声で罵倒するような行動に出ていたのであり、その結果、上司は原告に対する指示や注意を控えるようになり、同僚も原告を避けるようになって、業務の円滑な遂行に支障が生じていたことが認められる。これらの事実に照らせば、原告は、上司の指揮命令に従って業務を遂行しようとする意識ないしは同僚と協調して職務を遂行しようとする意識に著しく欠けていたことが明らかである。〔中略〕
 三 本件解雇の効力
 1 以上を総合すると、原告には、上司の指揮命令に従って誠実に業務を遂行しようとする意識ないしは同僚と協調して業務を遂行しようとする意識に著しく欠けていたことが認められるのであって、その程度は、業務の円滑な遂行に支障をきたすほどのものであったというべきである。そして、これらの事実は、原告が、協調性を欠くのみならず、職業人ないし組織人としての自覚に著しく欠けることを示すものであり、従業員としての適格性がないものと評価されてもやむを得ないと考えられる。そして、かかる状況に鑑みれば、原告の配転が困難であったことも首肯することができる。
 さらに、原告の勤務成績は、過去五年間で、全従業員の中で最低又は最低から二人目であって、著しく低く、前記認定にかかる原告の勤務状況に照らせば、右評定が不合理なものであるともいえない。
 これらの事実に、前記二のとおり、被告の業績悪化に伴う赤字部門の整理統合により、原告が所属していた大阪販売部が廃止され、その事務部門に所属していた原告が余剰人員となったことを併せ考慮すれば、原告には、労働協約三九条一項一号、六号及び就業規則一〇〇条一項一号、六号に準ずる事由があるというべきであるから、労働協約三九条一項七号及び就業規則一〇〇条一項七号所定の解雇理由が認められる。そして、組合も原告の解雇をやむを得ないものとして同意していることにも照らせば、本件解雇は、合理的なもので、これが著しく社会的相当性を欠き解雇権を濫用するものであるとはいえないというべきである。