全 情 報

ID番号 07293
事件名 出向命令無効確認請求控訴事件
いわゆる事件名 新日本製鐵事件
争点
事案概要  三年間の出向期間が三回延長されたことにつき、本件では就業場所や業務内容の変更を伴わず、また転所もないことなどから権利濫用には当たらないとされた事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 出向命令権の限界
配転・出向・転籍・派遣 / 出向命令権の根拠
裁判年月日 1999年3月12日
裁判所名 福岡高
裁判形式 判決
事件番号 平成8年 (ネ) 555 
裁判結果 主位的請求棄却、原判決取消、請求却下
出典 労経速報1721号8頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔配転・出向・転籍・派遣-出向命令権の根拠〕
 1(一) 控訴人らは、本件出向命令に期間の定めがないことを理由に合理性がない旨を主張する。また、仮に本件出向命令の期間が社外勤務協定に定められた三年間であったとしても、その後三回行われた出向期間の延長については、その都度必要性、合理性が要求され、さらに、右必要性、合理性の要件は、出向の期間が長期化するに応じて加重されるにもかかわらず、控訴人らに対して行われた三回の出向期間の延長は、この要件を満たしていないとして、本件出向命令が平成四年四月一五日以降、平成七年四月一五日以降、あるいは平成一〇年四月一五日以降それぞれ無効に帰した旨を主張する。
 (二) 前記認定のとおり、被控訴人は、本件出向命令発令後三年ごとにその期間を三年間延長しているのであり、このことからすれば、本件出向命令は、期間の定めのないものではなく、いずれも期間を三年間と定めて発せられ、社外勤務協定四条一項所定の「業務上の必要」に基づいて、出向期間が延長されたものと解すべきであり、右各期間延長は、業務上の必要があり、かつ、合理的な内容のものである限り、有効というべきである。〔中略〕
〔配転・出向・転籍・派遣-出向命令権の限界〕
 七 権利の濫用
 1 控訴人らは、〔1〕本件出向には復帰の可能性がないこと、〔2〕業務上の必要性がないこと、〔3〕出向回避策が採られなかったこと、〔4〕選定基準及び人選が不合理であったこと及び〔5〕配置転換の有無や懲戒権の主体など出向に関する労働協約の規定が不合理であるにもかかわらず、控訴人らの不安を解消するための説明が不十分であったことを理由に、本件出向命令が権利の濫用に当たり無効である旨を主張する。
 2 しかしながら、前記判示のとおり、本件出向命令の有効性を基礎付ける事実については、被控訴人が主張、立証責任を負担するというべきところ、右〔1〕ないし〔4〕は、本件出向命令の有効性に関する被控訴人の主張を否定する趣旨の主張にすぎず、その当否については、先に判断したとおりである。
 また、右〔5〕についても、出向に関する労働協約の規定が不合理であるとはいえない上、控訴人らの不安を解消するための説明が不十分であったことを認めるに足りる証拠もない。
 3 ちなみに、前記判示の事情によれば、被控訴人が控訴人らに対し三回にわたって行った出向期間の延長措置についても、権利の濫用に当たらないことは明らかである。
 4 右の次第であるから、控訴人らの権利濫用の主張は失当といわなければならない。