全 情 報

ID番号 07299
事件名 地位確認請求事件
いわゆる事件名 イー・ディーメディアファクトリー事件
争点
事案概要  原告五名が雇用されていた会社が三社に分社化され、A出向元会社からB出向先会社へ出向していたところ、A及びBが破産宣告を受けたため、残存会社となったYの従業員としての地位確認の訴えにつき、法人格濫用に当たるとは言えないとして、右訴えが棄却された事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約の承継 / 営業譲渡
労働契約(民事) / 労働契約の承継 / 新会社設立
裁判年月日 1999年3月15日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成7年 (ワ) 10500 
裁判結果 請求棄却(控訴)
出典 労働判例766号64頁/労経速報1709号3頁
審級関係
評釈論文 中村和雄・民商法雑誌121巻6号114~120頁2000年3月
判決理由 〔労働契約-労働契約の承継-営業譲渡〕
〔労働契約-労働契約の承継-新会社設立〕
 1 前記認定した事実によれば、A社が分社を計画し、これを発表したのは、C労組が結成されるより前であることが認められるから、A社の分社が、C労組つぶしを目的として行われたとは認められない。
 2 また、原告らは、A社、B社及び被告が実質的に同一の企業であると主張するが、C三社は、法律上、別個の法人格を有しており、A社及びB社と原告らとの法律関係が、被告と原告らとの間の法律関係と同一であるとするためには、法人格否認の法理等の適用の有無を判断すべきであるといえる。
 そこで検討するに、前記認定の事実によれば、C三社は、A社の分社後、それぞれ実質的に業務を行い、営業収入を得ていた事実が認められるから、A社、B社及び被告の法人格が形骸にすぎないということはできない。
 また、前記認定した事実によれば、被告に出向する者と、B社に出向する者との振り分けは、分社前の所属により機械的に決定され、組合を嫌悪して恣意的に行われたような事実は認められないし、分社後に、B社でなく、被告の従業員となった従業員も、多数辞職していた状況からすれば、C三社の経営状況はそれぞれ現実に悪化していた事実が認められる。
 そして、分社後のC三社のうち、A社及びB社が債務超過により自己破産を申し立てたことについては、前記認定の各事実からすれば、A社及びB社の代表取締役であったDが、分社後、B社及び被告からの業務委託費等が契約どおり支払われないため経営状況が改善せず、Eからは業務委託費の減額等を強硬に求められていたこと、B社の非組合員従業員の退職が続出したこと及びC労組との団体交渉への対応に困難を感じていたこと等から、事業継続の意欲を喪失して破産申立てをしたものと推認され、その後、A社及びB社は債務超過であると認められて破産宣告を受けており、その後もA社又はB社が名称を換えて事業を継続しているようなことはなく、D自身も、平成六年一一月に、被告の取締役を退任して被告に対し影響力を有していない事実が認められる。
 そうすると、A社及びB社の破産は仮装のものとは認められず、会社の正当な営業廃止行為であって、破産の目的がもっぱらC労組を潰すことを目的とするものとは認められず、法人格濫用の場合にあたるということはできない。
 3 さらに、原告らは、分社前のA社と労働契約を締結したから、A社の営業が営業譲渡により第三者に移転した場合、当然に労働者たる地位も潜在的・併存的に移転するから、原告らと被告との間にも潜在的・併存的な労働契約上の地位が存在しており、A社及びB社が倒産した時点で、被告との労働契約関係が顕在化し、被告に対し労働契約上の地位を有する旨主張するが、前記認定のとおり、A社の分社時における従業員の地位については、A社とB社及び被告との間で、出向に関する合意がされ、企画開発事業部に所属していた原告らも、右契約に基づき、B社に出向して業務を行うことに同意し、A社又はB社から給与の支給を受けていた事実が認められるのであり、原告らと被告との間に労働契約が存在するとは認められず、原告らの主張は採用できない。
 4 なお、原告らは、C三社は実体は一つの企業であり、法人格の濫用の場合に当たると主張し、これに関し、本件記録上、分社後の被告のコンピューターリース契約がA社名義でされたこと(〈証拠・人証略〉)、また、C三社の共同作業による売掛金の清算については、各会社のした仕事の対価の清算がきちんと行われていない状態であった(〈証拠略〉)等の事実は認められるが、分社に際し、A社が被告の経理・総務業務の業務委託を受けていること等からすれば、このような事実が存在するとしても、原告らと被告との間の雇用契約の存在を推認することはできず,(ママ)原告らと被告との間の雇用契約の存在を基礎づけるものではなく、他に本件記録上、原告らと被告との間に労働契約が存在することを認めるに足りる証拠はない。