全 情 報

ID番号 07348
事件名 損害賠償請求、国家賠償等請求、損害賠償等請求事件
いわゆる事件名 関東郵政局(胸章不着用)事件
争点
事案概要  郵便局に勤務する職員が、胸章を着用しなかったことで複数回にわたり訓告処分を受け、定期昇給の際に昇給号俸数を減じられ、また精神的損害を被ったとして損害賠償を請求したケースで、胸章着用を義務づけ、これに対する違反に訓告処分で臨むことが使用者の裁量権を逸脱した違法があるとはいえないとして請求が棄却された事例。
参照法条 民法415条
国家公務員法98条1項
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 債務の本旨に従った労務の提供
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務命令拒否・違反
裁判年月日 1999年6月15日
裁判所名 横浜地
裁判形式 判決
事件番号 平成7年 (ワ) 2474 
平成9年 (ワ) 3005 
平成10年 (ワ) 3610 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 労働判例768号27頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-債務の本旨に従った労務の提供〕
 本件胸章は、勤務中という限られた時間内に自己の従事する業務及び氏名を明らかにするというものであり、氏名の表示は姓のみでもよく、その表示も過度に大きなものとはいえないから、氏名表示の態様が前記胸章着用の目的に照らして不相当であるということはできない。
 (4) 原告らは、胸章着用による不利益として、胸章をきっかけとして職員の氏名が外部者の知るところとなり、それによって犯罪に巻き込まれる危険性が増大すること等を挙げるが、このような危険性は皆無とはいえないものの、胸章の表示事項を知られただけで当然に被害が生じるものではなく、これを利用しようとした部外者の行為とあいまって被害が生じるものであり、原告らが主張する方法である郵便局内で窓口に表示するなどの方法により氏名を明らかにする場合でも起こりうるものであるから、胸章の着用が当然にこのような危険性を内在しているとはいえない。
 (5) 以上によれば、本件胸章着用を義務づけ、これに反した者に対して、指導、警告等を経て訓告処分をもって臨むことは、社会通念上使用者の裁量の範囲を逸脱し、著しく不合理であるとはいえない。〔中略〕
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-業務命令拒否・違反〕
 本件胸章着用の義務づけ及びそれに基づく訓告処分は、いずれも使用者の裁量の範囲内であって、命令権、処分権の濫用ということはできない。