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ID番号 07381
事件名 遺族補償年金給付等不支給処分取消請求事件
いわゆる事件名 名古屋東労働基準監督署長事件
争点
事案概要  電気設備会社で主としてビル工事現場で電気設備工事に従事していた労働者が、持病の気管支喘息が悪化して死亡したことにつきその遺族が、遺族補償給付の不支給処分の取消しを求めたケースで、気管支喘息の悪化、それによる死亡は過重な業務、喫煙習慣、メジヘラの大量使用などによる相乗的効果の結果であり、業務と死亡との間に相当因果関係が認められるとして、請求が認容された事例。
参照法条 労働者災害補償保険法7条1項1号
労働者災害補償保険法12条の8
労働者災害補償保険法12条の2の第2号
体系項目 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 業務起因性
労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 職業性の疾病
労災補償・労災保険 / 補償内容・保険給付 / 保険料の怠納、労働者側の重過失等による給付制限
裁判年月日 1999年9月13日
裁判所名 名古屋地
裁判形式 判決
事件番号 平成6年 (行ウ) 33 
裁判結果 認容(控訴)
出典 タイムズ1016号270頁/労働判例776号8頁
審級関係
評釈論文 西村健一郎・月刊ろうさい51巻9号4~7頁2000年9月
判決理由 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-職業性の疾病〕
 亡Aは、同人の基礎疾病(気管支喘息)が、過重な業務、喫煙習慣及びメジヘラの長期間、大量使用による気管支喘息のコントロール不良の相乗効果によって重症化し、その状態の中で発生した重篤な発作による呼吸不全により死亡したものであるが、気管支喘息が重症化したのは、B住宅電気設備工事における極めて過重な業務が相当大きな要因となっていたこと、そして、短期間の内勤では右の症状が十分に改善されないまま再び現場代理人となり、死亡直前の頻繁な喘息発作の発症についても、Cサービスエリア電気設備工事における亡Aにとっては過重な業務がかなりの影響を及ぼしていたことを総合的に考慮すると、亡Aの死亡は、業務が基礎疾病をその自然的経過を著しく超えて悪化させたことにより発生したものと認めるのが相当である。
 したがって、亡Aの死亡と業務との間には、相当因果関係の存在を是認することができる。
〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-業務起因性〕
〔労災補償・労災保険-補償内容・保険給付-保険料の怠納、労働者側の重過失等による給付制限〕
 なお、付言するに、亡Aの死亡については、亡Aにも、度重なる医師の禁煙指導に従わなかったり、医師に無断でメジヘラを安易に乱用するなどの重大な過失が存在するから、労災保険法一二条の二の二の二号により、保険給付の全部又は一部を行わないことができる場合に該当する〔中略〕
〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-業務起因性〕
 当裁判所としては、疾病等の発症、増悪に複数の要因が関与している場合は、むしろ因果関係の判断を緩やかにして、前記労災保険法一二条の二の二の二号により給付制限をすべきであると考える。