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ID番号 07395
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 日建興業事件
争点
事案概要  アスファルト製造・販売等を営む会社の従業員が組合に加入したことを理由に仕事上の差別を受け、地労委に不当労働救済申立てを行ったところ、救済命令が出され、会社と労働組合との間で、右救済命令を踏まえて、差別待遇をしない旨の裁判上の和解が成立した後、会社がこれに反して従業員に仕事をさせない等の差別待遇を行ったことにつき従業員が損害賠償等を請求したケースで、右請求が一部認容された事例。
参照法条 民法415条
民法709条
労働組合法7条1号
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 使用者に対する労災以外の損害賠償
裁判年月日 1999年10月18日
裁判所名 福岡地
裁判形式 判決
事件番号 平成9年 (ワ) 737 
裁判結果 一部認容(控訴)
出典 タイムズ1021号189頁
審級関係
評釈論文 市川俊司・労働法律旬報1467号26~27頁1999年11月10日/松本光一郎・平成12年度主要民事判例解説〔判例タイムズ1065〕372~373頁2001年9月
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-使用者に対する労災以外の損害賠償〕
 被告は、平成五年ころから、分会及び原告らを組合活動を理由として差別し、本件協定や本件和解が各成立した後も、受注量が特に減少してもいないのに、オペ作業を非組合員にさせたり他の業者に回したりして、意図的に原告らをオペ作業にほとんど従事させず、本件和解に基づきオペ作業の保障給を支払ったほかは、原告らからオペ手当及び時間外手当を受給する機会を奪っているものと認められる。〔中略〕
 被告の右行為は本件和解に反するものであり、実質的に原告らの賃金請求権の発生を妨げたものであるから、被告は、差別行為がなければ原告らが従事できたであろうオペ作業に対するオペ手当及び時間外手当の相当する金額とこれに対する商事法定利率による遅延損害金を損害賠償として支払うべきである。〔中略〕
 (三)(1) 従来、三万円までの備品等については、稟議書等を必要としないで、原告らにおいて購入することが認められていたが、平成六年六月以降、瑣細な備品の購入についても、決裁を要することとされ、現在に至っている。〔中略〕
 (2) 従来、業務日誌等は作成されていなかったが、平成八年夏ころから、原告らだけに対して業務日誌の作成が命じられるようになり、現在に至っている。〔中略〕
 (3) 被告は、平成九年一月以降、原告らに対し、オペ作業に行ったときには現場作業の注文先から検収書にサインと時間を書いてもらう旨指示するようになり、現在に至っている。〔中略〕
 (四) 被告は、平成六年六月以降平成一〇年一一月まで、整備工場から離れた場所にある仮設の小屋を原告らの待機場所としていた。同所は、夏は暑く冬は寒い場所で環境は劣悪であった。〔中略〕
 (五) 被告は、平成七年以降、社内での新年会を非公式の形にして、原告らが参加できないようにしている。〔中略〕
 (六) 被告のA労務部長は、平成九年四月一八日及び平成九年一一月一〇日、本件訴訟について原告らに対し「お前ら俺をなめちょらせんか。俺も顔で飯食いようとたい。」、「俺のことばいろいろ書いて裁判所に出しちょろろうが。俺を好かんとならやってもいいとぞ。俺は知能犯やき、あんたんとこのガラスが割れたちゃ知らんぞ。」等と恫喝する発言をした。
 また、被告の労務担当であるB相談役も、平成九年一一月一九日、原告らに対し、「俺達も今度はやるけんね。お前達が組合費を二人で一万ちょっとでわざわざ組合が動くか。」等と威嚇する発言をした。〔中略〕
 2 右1で各認定した事実のうち、(一)の点は単に賃金の不支給であるというにとどまらず意図的に原告らに経済的な打撃を加えることを目的とした行為であると認められるから、単に賃金の不支給という債務不履行を構成するにとどまらず原告らに慰謝料請求権を生じせしめるものというべきであり、(二)以下の行為もいずれもそれ自体、被告の原告らに対する嫌がらせであることが明らかである。
 したがって、被告は各原告に対し右各行為について慰謝料を支払うべきであるが、その額は各原告につき五〇万円が相当と認められる。