全 情 報

ID番号 07420
事件名 死亡退職金請求
いわゆる事件名 高山電設事件
争点
事案概要  電気設備施工等を業とする会社Yの元取締役兼従業員で、Yを退職後、下請けとして工事を請け負っていたが、工事中の転落事故により死亡したAの妻Xが、AがYに在職していたときに、YはAの同意を得て保険会社との間で、業務中の事故の際の給与支払確保や損害填補のために、従業員を被保険者、Yを受取人として、死亡保険金及び災害保険金を内容とする団体定期保険契約を締結し、右契約がA退職後も継続していたところ、Aの死亡によりYが右契約に基づいて保険金を受領したことから、その引渡しを請求したケースで、YとAとの間で、Yが保険金を受領し、右保険金を業務中の事故の際の給与支払や損害填補に充当し、残額についてはAないしその相続人に引き渡す旨の合意がなされていたと認定され、Aの退職後も、Yが受領した保険金から元従業員が個人として負担する人夫費や元従業員が負う損害の填補に充当し、残額を元従業員ないしその相続人に引き渡すことを旨の内容に契約が変更されたにすぎないとして、保険金清算後の金額及び遅延損害金において請求が一部認容された事例。
参照法条 労働基準法89条1項3号の2
商法674条1項
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 団体生命保険
裁判年月日 1998年12月21日
裁判所名 神戸地
裁判形式 判決
事件番号 平成9年 (ワ) 2053 
裁判結果 一部認容、一部棄却(確定)
出典 労働判例764号77頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-団体生命保険〕
 Aが被告の従業員であった当時、本件保険契約(及びその以前の団体生命保険契約)の締結に際し、被告とA間で、被告が保険金を受給した上、業務中の事故の際の給与支払や損害填補(ママ)に充当し、残金はAないしその相続人に引渡すことが合意されていた、そして、Aが被告を退職後も、本件保険契約を継続することとされたが、その趣旨は、被告が受給した保険金からAが個人として負担する人夫賃やAが負う損害の填補(ママ)に充当した上、残額をAないしその相続人に引渡すことに変更されたとの事実を認めることができる。〔中略〕
〔労働契約-労働契約上の権利義務-団体生命保険〕
 原告は、精算合意が団体生命保険の趣旨に照らして公序良俗に反する、あるいは、Aの真意に反するものである旨主張する。しかし、Aが前記認定した本件保険契約の目的・趣旨を了解して、被告を受取人とする本件保険契約について被保険者同意をし、さらに被告を退職する際にもAが希望して精算合意をした上で本件保険契約を継続したことは先にみたとおりであり、その目的は団体保険契約の趣旨に照らしても特に違法・不当とはいえないし、右合意に至る経緯に強制等の不当な行為が存在したことを窺わせるような事情を認めることはできない。したがって、右精算合意が公序良俗に反するということはできないし、また、Aの真意に反するということもできない。